溶液中の溶質がある種の膜を隔てて置かれた溶媒または他の溶液の中に,膜を透過して拡散する現象が透析で,溶質がイオンやコロイドの場合,電界を与えてその移動を促進することを電気透析あるいは電解透析という。近年,イオンに対する選択透過性のすぐれた種々のイオン交換膜が入手できるようになったので,電気透析が大規模に工業的に行われるようになっている。第一は海水の濃縮あるいは淡水化で,この場合は,陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を使って,数室に区画した電解槽の両端の2室の一方に陽極,他方に陰極を設け,各室に海水を入れて通電する。陽イオン交換膜は陽イオンのみを透過し,一方,陰イオン交換膜は,陰イオンのみが透過する結果として,海水の濃度が高くなる室と低くなる室とが生ずる。濃度の高くなる室からは塩化ナトリウムNaClを採り,濃度が低くなる室の水は淡水として利用する。新しい食塩電解法として注目されているイオン交換膜法も電気透析の応用である。
執筆者:笛木 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コロイド粒子が半透膜を通過できない性質を利用してコロイド溶液中の不純物を除き精製する方法を透析というが、この操作で、半透膜の外側に設けた一対の電極にかけた直流電圧によってイオンの移動を加速しながら行う方法である。電解透析ともいう。スウェーデンのティセリウスの発明したものである。普通の透析ではセロファンやコロジオン膜のような半透膜の袋の中に未精製のコロイド溶液を入れ、これを純水や溶媒の中に浸し、コロイド溶液中の低分子物質が自然に膜外に拡散して出ていく方法で分離するが、コロイド溶液中に低分子電解質が存在する場合には、袋の両側に陰陽の電極を置いて拡散速度を速める方法をとる。酵素、タンパク質をはじめ種々の物質の精製に広く利用されている。
[高田健夫]
電解質を含んだコロイドや高分子溶液を透析するとき,隔膜を通して直流を流し,電解質の透析除去速度を高める操作.現在では,電解質溶液のみを取り扱う場合にも用いられる.そして,その応用は脱塩,濃縮,精製,洗浄,分離,回収などの諸操作にわたっている.電気透析には通常数枚の隔膜で分離された多室電解槽が用いられ,その能率は用いられる隔膜の性能にかかっている.隔膜は膜のもつ電荷の種類により,陰性膜および陽性膜に分かれ,前者はカチオン透過性,後者はアニオン透過性を示す.このイオンの選択透過性と電気伝導率は,隔膜の性能を評価するうえで重要な電気化学的性質である.陰性膜にはパーチメント紙,コロジオン,セロハン,素焼き板など,陽性膜には,膀胱膜,絹布,フェルト,クロムゼラチン膜などがあるが,これらの大部分のものは,その電気化学的性質が十分ではない.イオン交換樹脂膜は,その性質がすぐれ,工業的な電気透析用隔膜として用いられる.[別用語参照]イオン交換膜
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…これには,真空中で水を蒸発させてその潜熱で海水自身を冷却する直接法と,液化ブタンや液化天然ガス(LNG)などの冷媒を海水中で気化させてその潜熱で海水を冷却する間接法とがある。
[電気透析法]
陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に組み合わせて,電流を流すことにより,溶解しているイオンを一定の方向に移動させて淡水化を行う方法。
[逆浸透法]
水は通すが塩分は通さない半透膜を用い,これに海水の浸透圧(約25kg/cm2)以上の圧力を加えることによって,海水から膜を通して淡水のみを得る方法。…
…イオンの拡散透析は電位差によって加速される。これを電気透析という。【妹尾 学】。…
※「電気透析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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