精選版 日本国語大辞典 「霑」の意味・読み・例文・類語
しおりしほり【霑】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「しおる(霑)」の連用形の名詞化。「しをり」と書かれることも多い )
- ① しおしおとあわれ深い感じを催させること。しみじみともののあわれを感じさせること。また、そのようなもの。
- ② 能楽で、泣くことを表現する唯一の型。面(おもて)をくもらせ(ややうつむけ)て、左、右、または両の手のひらを内側にして目の前にかざすこと。
- ③ ( シヲリ ) 謡曲で、上音から、さらに一段高い音階まで声を上げる節まわし。ただし、クリのようにくらないで上げる。金春・金剛・喜多の下掛(しもがかり)の三流にみられる。しおりぶし。
- ④ 俳諧で、蕉風の完成期に芭蕉が説いた美的様相の一つ。句の趣向、用語、素材があわれなものをいうのではなく、しみじみとした哀感が句の姿に余情として表われているのをいう。ただし、支考や後世の蓼太などにいたっては、付合(つけあい)についていい、前句の余情をたどって付けることと理解していた。
- [初出の実例]「さびは句のいろに有、しほりは句の余勢に有」(出典:俳諧・青根が峯(1698)答許子問難弁)