(読み)しおり

精選版 日本国語大辞典 「霑」の意味・読み・例文・類語

しおりしほり【霑】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「しおる(霑)」の連用形の名詞化。「しをり」と書かれることも多い )
  2. しおしおとあわれ深い感じを催させること。しみじみともののあわれを感じさせること。また、そのようなもの。
  3. 能楽で、泣くことを表現する唯一の型。面(おもて)をくもらせ(ややうつむけ)て、左、右、または両の手のひらを内側にして目の前にかざすこと。
  4. ( シヲリ ) 謡曲で、上音から、さらに一段高い音階まで声を上げる節まわし。ただし、クリのようにくらないで上げる。金春・金剛喜多の下掛(しもがかり)三流にみられる。しおりぶし。
  5. 俳諧で、蕉風の完成期に芭蕉が説いた美的様相の一つ。句の趣向、用語、素材があわれなものをいうのではなく、しみじみとした哀感が句の姿に余情として表われているのをいう。ただし、支考後世の蓼太などにいたっては、付合(つけあい)についていい、前句の余情をたどって付けることと理解していた。
    1. [初出の実例]「さびは句のいろに有、しほりは句の余勢に有」(出典:俳諧・青根が峯(1698)答許子問難弁)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「霑」の読み・字形・画数・意味


16画

[字音] テン
[字訓] うるおす・うるおう・ぬれる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は沾(てん)。沾に沾濡の意がある。〔説文〕十一下に「雨ふりて(うるほ)すなり」とあり、雨に濡(ぬ)れて色がうつることをいう。また、ことが次第に深く及ぶことをいう。

[訓義]
1. うるおう、うるおす、しめる、ぬれる。
2. ひたる、ひたす、ゆきわたる、次第に深く及ぶ。

[古辞書の訓]
名義抄〕霑 ウルフ・カウフル・キヨシ・ソソグ・ヒタス 〔立〕霑 フルキ・カフル・ソソグ・ウルホス・ヨシ・イサギヨシ・キヨシ・タフトク

[語系]
霑tiam、沾thyam、漸dziamは声義近く、漸とは次第にひたることをいう。tziam、(浸)・tzimも声義近く、みな次第に沾濡の及ぶことをいう。

[熟語]
霑渥・霑衣・霑霑恩・霑化・霑汗霑凝霑襟霑衿霑灑霑漬霑濡霑潤霑酔・霑接霑窃・霑足霑貸・霑滞・霑被・霑沐・霑賚・霑露
[下接語]
渥霑・恩霑・化霑・巾霑・均霑・潤霑・深霑・仁霑・霜霑・沢霑・泥霑・普霑・乱霑・涙霑・露霑

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