支考(読み)しこう

精選版 日本国語大辞典 「支考」の意味・読み・例文・類語

しこう シカウ【支考】

江戸中期の俳人各務(かがみ)氏。別号は東華坊西華坊獅子庵、野盤子。別名は蓮二房、白狂、渡部ノ狂など。美濃の人。蕉門十哲の一人。師の没後、平俗な美濃派の一流を開き、その普及に努めた。また体系的な俳論を説き、仮名詩創始編著に「葛(くず)松原」「俳諧十論」「笈日記(おいにっき)」「本朝文鑑」など。寛文五~享保一六年(一六六五‐一七三一

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デジタル大辞泉 「支考」の意味・読み・例文・類語

しこう〔シカウ〕【支考】

各務支考かがみしこう

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改訂新版 世界大百科事典 「支考」の意味・わかりやすい解説

支考 (しこう)
生没年:1665-1731(寛文5-享保16)

江戸中期の俳人。姓は各務(かがみ)。別号は東華坊,西華坊,野盤子,変名に蓮二房(れんじぼう),白狂など,諡号(しごう)を梅花仏という。美濃山県郡北野(現,岐阜市)に生まれ,幼時仏門(禅宗)に入るがのち還俗,1690年(元禄3)近江で芭蕉に入門した。俳論書《葛の松原》を上梓し,《続猿蓑》の編集に協力したが,芭蕉没後は追善の事業や,九州,中国をはじめ数次の北陸への行脚等を通して,俳壇形成や俳諧の理論的普及につとめ,美濃派の俳諧の確立に力を尽くした。1711年(正徳1)にはみずから終焉記を作って世間の評価をうかがい,その後は門人蓮二房,白狂等の名で著述し,自己の業績を称揚したりした。作風は俗談平話を旨とし,その論は俳諧の本質から表現におよび,虚実論,姿情論,七名八体の説など儒仏老荘とのかかわりを説く思弁性と,作例などによって平易に説く具体性とをもち,独自の論理と文体によってそれを展開している。編著書は,芭蕉追善の書に《芭蕉翁追善之日記》《笈日記》《東山万句》《三千化》等,行脚等の成果として《梟(ふくろう)日記》《西華集》《東華集》等,俳論書に《続五論》《俳諧十論(じゆうろん)》《十論為弁抄》等,俳文や仮名詩の実作と理論に関しては《本朝文鑑》《和漢文操》等がある。追善集に廬元坊編《文星観》《渭江話(いこうばなし)》等がある。〈食堂に雀啼くなり夕時雨〉(《続猿蓑》)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「支考」の意味・わかりやすい解説

支考
しこう
(1665―1731)

江戸中期の俳人。各務(かがみ)氏。別号東華坊、野盤子(やばんし)、見竜、獅子庵(ししあん)、変名蓮二(れんじ)坊など。美濃(みの)国(岐阜県)の人。幼時、郷里の禅寺に入ったが、19歳で下山して遊歴、1690年(元禄3)26歳のとき近江(おうみ)で芭蕉(ばしょう)に入門、その博学多才を愛されて晩年の芭蕉に随侍した。師の没後は、地元美濃を本拠に北越や九州方面に至るまで広く行脚(あんぎゃ)を重ねて、蕉風俳諧(はいかい)の伝播(でんぱ)に貢献すること大であったが、1711年(正徳1)には死亡したと偽って自己の「終焉記(しゅうえんき)」を出すなど、世人の反感・誤解を買うことも多かった。支考一派は美濃風とよばれるが、作風は俗談平話を旨として平明卑俗、軽い談理をも含んで、大衆に迎えられるところであった。また俳論家としても、『葛(くず)の松原』『続(ぞく)五論』『二十五箇条』『俳諧十論』など多数の俳論書を著し、蕉風俳論をよく体系づけている。墓所は岐阜市山県(やまがた)の大智寺門前にある。

[堀切 實]

 牛呵(しか)る声に鴫(しぎ)立つゆふべかな

『堀切實著『支考年譜考証』(1969・笠間書院)』『堀切實著『蕉風俳論の研究――支考を中心に』(1982・明治書院)』

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百科事典マイペディア 「支考」の意味・わかりやすい解説

支考【しこう】

江戸中期の俳人。蕉門十哲の一人とされる。姓は各務(かがみ),別号,東華坊,野盤子,獅子庵等。変名蓮二坊,白狂等。美濃の人。1690年ごろ芭蕉の門に入り,《続猿蓑》の撰をたすける。師の没後美濃派を興して蕉風を継ぎ,諸地方を行脚して自家の俳諧の確立,宣伝に努めた。平俗な機知に富んだ作風で,俳論にもすぐれる。編著に《葛の松原》《笈日記》《俳諧十論》など。→千代女
→関連項目伊勢派俳諧七部集俳文風俗文選

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「支考」の解説

支考 しこう

各務支考(かがみ-しこう)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「支考」の意味・わかりやすい解説

支考
しこう

各務支考」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の支考の言及

【虚実】より

…ただ,談林俳諧ではこの論に見合う優れた作品がないため,理屈倒れの観がないでもない。ところが,蕉風俳諧の時代になると,芭蕉の門人各務支考がこれを受け,〈言語は虚に居て実をおこなふべし。実に居て虚にあそぶ事かたし〉(《風俗文選》所収〈陳情表〉)と徹底し,さらに〈抑,詩歌連俳といふ物は上手に噓(うそ)をつく事なり。…

【葛の松原】より

…俳諧論書。各務(かがみ)支考著。1692年(元禄5)刊。…

【蕉風俳諧】より

…いわゆる七部集の連句を例にとっても,《冬の日》(1684)は名古屋蕉門,《ひさご》(1690)は近江蕉門,《猿蓑》は京蕉門,《炭俵》(1694)は後期江戸蕉門の所産で,前期江戸蕉門はもとより,芭蕉とこの変風を終始ともにした門人は皆無といってよい。景情融合の理想は,芭蕉没後,〈軽み〉を継承して景先情後を推し進める支考流と,情先景後に向かう其角流とに分裂し,前者は地方俳壇で平俗化し,後者は都市俳壇で奇矯化の道をたどった。【白石 悌三】。…

【蕉門十哲】より

…許六の〈師の説〉に〈十哲の門人〉と見えるが,だれを数えるかは記されていない。その顔ぶれは諸書により異同があるが,1832年(天保3)刊の青々編《続俳家奇人談》に掲げられた蕪村の賛画にある,其角,嵐雪,去来,丈草,許六(きよりく),杉風(さんぷう),支考,野坡(やば),越人(えつじん),北枝(各項参照)をあげるのがふつうである。【石川 八朗】。…

【俳諧十論】より

…俳諧論書。支考著。1719年(享保4)刊。…

※「支考」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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