マッツィーニ(読み)まっつぃーに(英語表記)Giuseppe Mazzini

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マッツィーニ」の意味・わかりやすい解説

マッツィーニ
まっつぃーに
Giuseppe Mazzini
(1805―1872)

イタリアの革命家、思想家で、イタリア独立・統一運動(リソルジメント)の中心的人物。ジェノバに生まれる。ジェノバ大学で法律を学んだ。大学時代に秘密結社カルボナリ党に加わり、政治活動を開始した。1830年2月に逮捕され、1831年に亡命地マルセイユ共和主義と統一をスローガンとする青年イタリア党を結成した。1834年2月、一斉蜂起(ほうき)の突破口とするサボア遠征を企てたが失敗に終わった。同年4月、亡命地ベルンで神聖同盟に対抗する人民の同盟として超民族的な組織、青年ヨーロッパ党を結成した。1837年ロンドンに亡命し、彼の指導する革命運動は沈滞期を迎える。1839年ごろから行動を再開し、イタリア国内への運動指導を行った。第一次イタリア独立戦争期には、統一を優先し、政治体制の決定は戦争勝利後まで保留する方針をとった。ただ、ミラノの臨時政府のとったサルデーニャ王国への北イタリア併合という方針に反対し、共和制による統一を主張した。1849年2月に宣言されたローマ共和国では、三頭執政官の一人として、独裁的な地位を確保した。

 共和国崩壊後、スイス、ロンドンに亡命したが、イタリアのリソルジメントの指導と並行してヨーロッパの民主主義運動の組織化に没頭した。イタリアでは、彼が1853年に結成した行動党を中心に、状況判断を欠く悲劇的な結末に終わる蜂起が繰り返されており、運動の勢力は著しく弱体化していった。これに対して、「イタリアとビットリオ・エマヌエレ」をスローガンとするカブールを中心とする穏和派の勢力が台頭してくる。1861年のサルデーニャ王国によるイタリア統一後、マッツィーニは、ローマ・ベネチアの併合、普通選挙によって選ばれた議会による憲法制定などを主張する論陣を張った。また、第一インターナショナルの創設にも参加したが、理想的社会を資本家と労働者の友愛的連合と考え、社会主義理論を理解できなかった。ただ、リソルジメントのほぼ全期間を通じて、彼の不屈の統一理念は強く影響を与え続けた。

[藤澤房俊]

『マッツィーニ著、齋藤ゆかり訳『人間の義務について』(岩波文庫)』『森田鉄郎著『マッツィーニ』(1972・清水書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マッツィーニ」の意味・わかりやすい解説

マッツィーニ
Mazzini, Giuseppe

[生]1805.6.22. ジェノバ
[没]1872.3.10. ピサ
イタリアのリソルジメント運動推進者,共和主義者。 1827年「カルボナリ結社」に加盟,30年逮捕,投獄されて翌年国外追放。 31年秋亡命地のマルセイユでイタリア統一を目指す行動的結社「青年イタリア」を結成。ゲリラ的な蜂起活動を運動形態として,こののち幾度か蜂起計画を試みるがすべて失敗に終った。思想的にはサン=シモンの進歩観と協同社会論を受入れ,平等主義に立って社会革命を唱える老陰謀家 F.ブォナローティと対立した。 34年「青年イタリア」を国際的に拡大した「青年ヨーロッパ」を結成して,ナショナリズムの理論を練り上げ,37年ロンドンに移ってチャーティスト運動に接し,この経験から労働運動の重要性を認識した。 48年ミラノ革命に加わるためイタリアに戻り,49年ローマ共和国の成立とともに首長の一人に選ばれた。この 48~49年革命のなかで社会革命を否定して国家統一を最優先の目標に掲げ,統一運動と社会革命の結合を主張する G.フェラリや C.ピサカーネと対立した。革命敗北後再びロンドンに亡命,50年ルドリュ・ロランらとヨーロッパ民主中央委員会を結成するかたわら,イタリア国内の運動準備にも精力的に取組み,53年行動党を設立。 57年ピサカーネの南イタリア遠征に呼応してジェノバで蜂起を試みるが失敗。 59~60年のリソルジメント運動の最終局面では主導権を C.カブールに奪われて活躍できず,念願の国家統一も共和制でなく君主制で実現されることになった。失意のうちにまたロンドンに亡命したが,ここでは 64年国際労働者協会 (第1インターナショナル) の設立をめぐってマルクスと対立した。 70年ローマ奪回と共和制の樹立を求めてイタリアに潜入するが失敗,71年のパリ・コミューンに反対の立場をとって M.バクーニンと論争した。マッツィーニの生涯は不成功の連続であったが,思想と行動は死後も長く共和主義運動の伝統のなかに残された。

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