音無滝(読み)おとなしのたき

日本歴史地名大系 「音無滝」の解説

音無滝
おとなしのたき

[現在地名]左京区大原来迎院町

来迎らいこう院の東、りつ川の上流にあり、近世の「都名所図会」は「来迎院の東四丁にあり、飛泉二丈余にして、翠岩にうて南へ落つる」、「山城名勝志」は「在梶井宮後山、来迎院本堂東五丁許」と記している。岩が平らで、水が流れ落ちても音がしないのでこの名があるとも、来迎院を再興した良忍上人が、滝の音に声明が乱されるのを嫌って呪文で水声をとめたからとも伝えられる。

<資料は省略されています>

など、多くの歌に詠まれる歌枕であるが、「能因歌枕」「五代集歌枕」「八雲御抄」など歌学書はいずれも紀伊国とする。しかし、「源氏物語」夕霧の巻に、小野山荘に隠棲している落葉宮の歌として

<資料は省略されています>

とあり、先の西行の歌も同じく「小野山」近くの滝としている。

音無滝
おとなしのたき

歌枕。「能因歌枕」「五代集歌枕」などに紀伊国の名所として載る。音無川の急湍か、本宮付近で音無川に落ちる滝を称したかと考えられるが、具体的に場所の判明する詠歌は、京都大原三千おおはらさんぜん院の東、小野おの山近くの滝をさす場合が多く、「枕草子」が「滝は、音無滝」というのも小野山の音無滝と考えられる。「花鳥余情」の「今案、音なし川はきの国にあり、音無滝は小野山に有」というのが妥当であろう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報