キャッシュカードの偽造や盗難などによって預金を引き出された場合の被害額補償を、金融機関に義務づけた法律。正式名は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」。平成17年法律第94号。カード被害が社会問題化したにもかかわらず、民間金融機関は民法に基づく約款(契約上の自主ルール)を盾に補償に応じず、金融庁も法制化に消極的であった。このため、議員立法で2005年(平成17)に法制化し、2006年2月に施行した。同法施行後、民間金融機関はATM(現金自動預金支払機)の利用限度額を下げたり、生体認証型の安全システムを導入したりしたため、被害は徐々に減少傾向にある。
保護対象は、銀行、信用金庫、信用組合、農業協同組合、漁業協同組合、労働金庫などほぼすべての金融機関の預貯金。警察と金融機関への被害届が必要で、原則、届け出から30日前までのATM引出し被害が補償対象となる。
キャッシュカードの持ち主に「故意や重大な過失はない」「軽い過失があった」「重大な過失があった」の3通りで補償額が違ってくる。過失がない場合は、被害額を全額補償される。「軽い過失」の場合は、カードの偽造被害なら全額補償されるが、カードの盗難被害の場合、被害額の75%しか補償されない。「重大な過失」の場合は盗難、偽造ともに被害額は補償されない。全国銀行協会は、過失の「軽重」の目安を公表しており、「暗証番号をカードに書き込んでいた」「暗証番号を他人に教えた」「安易にカードを第三者に渡した」などのケースは「重い過失」にあたる。「カードと生年月日がわかる書類をいっしょに保管していて盗まれた」といった場合は「軽い過失」となる。脅されて暗証番号を教えた場合などは無過失。預金者に過失があったかどうかは、金融機関に立証する責任がある。
同法施行後、銀行などの金融機関は、偽造をしにくいIC(集積回路)カードへの切替え、生体認証システムの導入などの対策を進め、2008年度の不正引出し被害は前年度より3割以上減るなど一定の効果をあげた。なお盗まれた通帳による被害や、インターネットバンキングで預金を不正に引き出される被害は預金者保護法の補償対象外となっているが、全国銀行協会は2008年に業界の自主ルールを定め、預金者に過失がない場合、通帳やインターネットを通じた被害も原則、補償する姿勢に転じた。
[矢野 武]
『高見澤昭治・齋藤雅弘・野間啓編著『預金者保護法ハンドブック』(2006・日本評論社)』
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(篠崎悦子 ホームエコノミスト / 2008年)
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