まだ食べられるのに廃棄される食べ物。小売店での売れ残りや飲食店での食べ残しなど事業者から出るものと、賞味期限切れなどで家庭から出るものがある。2022年度の国内推計は472万トン。国民1人当たりおにぎり1個分ほどが毎日捨てられている計算となり、経済損失は4兆円に上る。世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた各国の支援の量(約480万トン、22年)にも匹敵する。事業者側による需要の見誤り、過剰に鮮度を求める消費者の志向などが背景にあるとされる。
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本来食べられるにもかかわらず、廃棄される食品。食料ロス、フードロスともいわれる。農林水産省の2016年(平成28)調査では、日本で1年間に廃棄される食品由来の廃棄物はおよそ2759万トンあり、このうち食品ロスは643万トンにのぼる。これは国連世界食糧計画(WFP)の援助食糧のほぼ2年分に匹敵する。節分に食べる「恵方(えほう)巻き」の大量廃棄などが社会問題化し、日本では2019年(令和1)に国、自治体、企業、消費者をあげて削減に取り組む食品ロス削減推進法(正式名称「食品ロスの削減の推進に関する法律」、令和元年法律第19号)が施行された。
国連食糧農業機関(FAO)が2011年に発表した試算によれば、世界で人が消費するために生産されている食料の3割を超える13億トンが、毎年失われ、あるいは捨てられている。食料不足や穀物相場高騰などの懸念が世界的に高まっており、食品ロスをいかに減らすかが大きな課題である。日本の食品ロスは小売店、外食産業、食品メーカーなどの事業系と家庭系とに大別され、事業系ロスが約352万トン、家庭系は約291万トンにのぼる。事業系ロスのおもな原因は、飲食店や旅館・ホテルでの食べ残し、コンビニやスーパーなどの賞味期限前の撤去、製造段階での規格外品などの過剰廃棄がある。とくに、食品メーカーは賞味期限の前半3分の1の期間しか商品を小売店へ納品できず、小売店も賞味期限の前半3分の2の期間しか消費者に販売できないという商習慣「3分の1ルール」があり、これが食品ロス発生の大きな原因となっている。また家庭系では食べ残し、使い残し、賞味期限切れなどによる直接廃棄がロスを生んでいる。いずれも、鮮度を過度に重視する消費行動や商慣習が、食品ロスを増やす要因となっている。
日本政府は食品ロス削減推進法に基づいて基本方針をつくり、これに沿って地方自治体が削減計画を策定。食品ロスの実態調査、消費者や企業への啓発活動、先進的取組みの顕彰と普及、賞味期限前の未使用食品を貧困家庭などへ贈る「フードバンク活動」支援などに取り組んでいる。ただ同法には罰則などの強制力がなく、実効性が課題となっている。
[矢野 武 2020年2月17日]
(原田英美 ライター/2019年)
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