精選版 日本国語大辞典 「餠」の意味・読み・例文・類語
もち【餠】
- 〘 名詞 〙
- ① 糯米(もちごめ)を蒸して十分粘りけの出るまで臼で搗(つ)き、丸めたり、平たくのしたりしたもの。そのまま食したり、餡(あん)や黄粉(きなこ)をつけて食べたり、乾燥させたあと焼いたり、煮たりして食する。糯米以外に、粟、黍(きび)などでもつくる。また、艾(よもぎ)の若芽をつき込んだりするものもある。正月、節供、祭、新築祝いなど、主に慶事の時につく。もちいい。もちい。《 季語・冬 》
- [初出の実例]「正月に流布する菓子のもち、如何。もちは餠也」(出典:名語記(1275)六)
- ② つきたての①のように、柔らかくふっくらとしたもの。
餠の語誌
( 1 )古くは「モチイヒ」の略で「モチヒ」と呼ばれていた。鎌倉時代に入ってもモチヒの形が見られるが、平安時代中期にはハ行転呼の現象により、既に「モチヰ」の形をとっていたと思われる。
( 2 )鎌倉時代にはヰとイの混乱が生じており、「モチイ」は末尾の母音連続を約して「モチ」となった。
( 3 )室町時代の辞書類を見ると、モチ・モチイ両方の形をのせているものが多い。しかし「くさもち」「かいもち」のように複合語はほとんどモチの形になっている。
( 4 )この変化はやがて単独での語形にも及び、江戸期に入るとモチのみをあげる辞書がほとんどとなり、モチヒを古語扱いしたものもある。