髄膜腫(読み)ズイマクシュ(英語表記)Meningioma

デジタル大辞泉 「髄膜腫」の意味・読み・例文・類語

ずいまく‐しゅ【髄膜腫】

脳腫瘍の一つ。脳を包む硬膜から発生し、脳や神経を圧迫する。

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六訂版 家庭医学大全科 「髄膜腫」の解説

髄膜腫
ずいまくしゅ
Meningioma
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 脳の表面をおおっているくも膜と呼ばれる組織細胞から発生し、脳を圧迫しながら大きくなる腫瘍(しゅよう)です。脳腫瘍全体の26%を占め、成人女性に発生することが多く手術で全部取ることができれば完全に治る良性の原発性(げんぱつせい)脳腫瘍です。

 近年脳ドック普及CTおよびMRIを撮影される機会が増えたことに伴い、症状が現れる前に見つかる髄膜腫も増えてきました。発生場所は、脳の表面であればどこでもできます。そのほか、頻度は少ないのですが、脳の深いところで髄液(ずいえき)をつくる脳室と呼ばれる場所に発生することもあります。

症状の現れ方

 良性の腫瘍で、かつ脳を表面から圧迫するように徐々に大きくなるため、思わぬ大きさになって発見されることもあります。症状としては、てんかん発作、麻痺、感覚障害、性格の変化などが徐々に現れます。時に、髄膜腫ができる場所により、眼で見える範囲が狭くなったり、眼が見えにくくなったり、顔が痛くなったり、めまいなどの症状が現れます。

検査と診断

 MRI検査により、腫瘍ができた場所とその大きさを診断します(図35)。時に脳血管撮影が行われます。この検査は、髄膜腫に栄養を与える血管がどこから来るか、まわりの血管、とくに静脈との関係はどうか、などを判断することが可能で、手術のやりやすさを知るうえで重要です。また、頭蓋骨に接して髄膜腫ができた場合、CT検査で骨の細かい断層写真をとります。

治療の方法

 手術が基本です。この腫瘍は、頭蓋骨の内側で脳を保護している硬膜(こうまく)と呼ばれる組織に入り込んでいるので、手術ではこの硬膜も切除します。手術前に行われた脳血管撮影で腫瘍に栄養を与える血管が豊富であった場合には、手術中の出血を少なくするために、手術前にその血管を詰める治療が行われることがあります。

 時に重要な神経や血管を巻き込んで腫瘍が大きくなっていることがあります。この場合には、頭蓋骨をドリル(けず)ったり、脳の血管にほかの場所から血管を移植したりする特殊な技術が必要になります。また、どうしても手術によって切除することができなかった腫瘍には、手術後に、残った腫瘍に放射線を照射します。

松前 光紀


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内科学 第10版 「髄膜腫」の解説

髄膜腫(脳腫瘍各論)

(2)髄膜腫(meningioma)
 全脳腫瘍の約26%を占める良性の腫瘍である.くも膜細胞由来の腫瘍とされており,そのほとんどは硬膜に接して発生,脳を実質外より圧排する.
好発年齢・性差・好発部位
 成人に圧倒的に多く,女性に多い(約2倍).腫瘍発生部位は,傍矢状部,大脳鎌,大脳半球円蓋部,蝶形骨縁,嗅窩,鞍結節,小脳橋角部,小脳テント,斜台,小脳半球円蓋部,大孔,側脳室など多岐にわたる.
臨床症状
 腫瘍発生部位に応じたさまざまな脳局所症状をみるが,腫瘍は非常に緩徐に増大するので,症状の発現は腫瘍がかなり大きくなってからのことが多い.
診断
 CT,MRI上,造影剤によって均一に造影される脳実質外腫瘍として描出されるが,側脳室内に発生するような例外を除き,腫瘍は硬膜との付着部を有している(図15-14-2A,B).腫瘍周辺にしばしば脳浮腫を認めるが,これは腫瘍サイズの大きなもので顕著である.
治療
 治療の原則は開頭術による腫瘍の全摘出であり,これにより完治を期待することができる.腫瘍は付着硬膜やこれに接する骨にもしばしば浸潤しているため,硬膜・骨を含めた広範囲の切除が必要となる.海綿静脈洞など頭蓋底部に発生する髄膜腫では,内頸動脈や各種脳神経が腫瘍に巻き込まれていることも多く,腫瘍の全摘出が不可能な場合も少なくない.髄膜腫は良性の腫瘍であるが,術後に腫瘍が残存すれば5年後の再発率は30%以上になるとされている.最近では,開頭術によって全摘出が達成されなかった症例に対して,ガンマナイフやLINACを用いた放射線外科治療(radiosurgery)を追加施行することもある.[新井 一]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「髄膜腫」の意味・わかりやすい解説

髄膜腫
ずいまくしゅ

頭蓋(とうがい)内に発生する脳腫瘍(しゅよう)の一種。原発性で、まれに頭蓋の外に発生することがある。良性であることが多いが、一部悪性のものもある。頭蓋骨の裏側にあって脳を覆っている髄膜(硬膜、くも膜)のうち、脳側にあるくも膜の表面を覆うくも膜細胞に由来する腫瘍で、脳や神経を圧迫しながら徐々に形成される。2009年(平成21)の脳腫瘍全国集計調査報告では原発性脳腫瘍の27.1%を占め、発生頻度がもっとも高い。中年以降の女性に好発し、また高齢者に発生する脳腫瘍のおよそ25%を占める。腫瘍の増大につれて脳の圧迫症状が強まり、脳圧が亢進(こうしん)して頭痛や吐き気・嘔吐(おうと)などが生じる。症状は早朝起床時に強い。けいれんを伴うことがあり、発生部位によって片麻痺(まひ)や四肢麻痺あるいは脳神経麻痺を生じ、歩行障害などもみられる。さらに増大し圧迫が強まると物忘れや認知症症状を呈する。腫瘍摘出後の予後は良好であることが多い。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「髄膜腫」の意味・わかりやすい解説

髄膜腫
ずいまくしゅ
meningioma

メニンジオーマともいう。成人の脳腫瘍中最も多い良性腫瘍で,全脳腫瘍の約 20%を占める。 30~50歳代の女性に多い。脳を外側から圧迫して発育し,脳実質の中に浸潤することがないので,脳実質との境界は常に画然としているのが特徴で,神経膠腫 (グリオーマ) とは対照的である。けいれん発作などの神経症状が長く続いたのちに脳圧亢進症状を呈するため,巨大になってから発見されることが少くない。治療には摘出手術を行う。まれに悪性化するが,摘出できれば予後は良好である。

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世界大百科事典(旧版)内の髄膜腫の言及

【頭痛】より

… 頭蓋内疾患による頭痛は,なんらかの神経症状を伴うことが普通である。髄膜腫のような腫瘤形成性の病変は頭痛を訴える前に局所症状を呈しやすいが,浸潤性の神経膠腫(こうしゆ)などは大脳半球全体を占めるほどになっても頭痛を訴えないことがある。転移性脳腫瘍もよく頭痛を伴うが,必ずしも激しいものでなく,また一定したものでもない。…

※「髄膜腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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