翻訳|glioma
脳や脊髄(せきずい)に発生するもっとも頻度の高い腫瘍(しゅよう)で、グリオームGliomともいい、中枢神経系のあらゆる部位に発生する。原発性脳腫瘍の35~50%、原発性脊髄腫瘍の15~20%を占める。腫瘍発生学的にみると、神経膠腫の母細胞は神経膠細胞と考えられている。この神経膠細胞や神経細胞は神経外胚葉(はいよう)性の起源をもつものであり、神経膠腫は神経外胚葉性起源の腫瘍の総称ともいえる。したがって神経膠腫は、正常の神経組織と境界を画さないのが特徴であり、一般に手術的に全摘出するのは困難である。
神経膠腫は、組織学的にさらに詳しく分類されている。全年齢でみると星細胞腫(せいさいぼうしゅ)astrocytomaがもっとも多く、30.7%と全神経膠腫の3分の1を占めている。ついでもっとも悪性な膠芽腫glioblastomaが28.5%、悪性星細胞腫malignant astrocytomaが15.4%と続いている。星細胞系統の腫瘍は、このように全神経膠腫の半数以上を占めているが、その分化の程度がまちまちなので、分化度の高い臨床的に比較的良性な腫瘍を単に星細胞腫とよび、未分化な型を悪性または未分化型星細胞腫anaplastic astrocytomaとよんでいる。
乏突起膠腫oligodendrogliomaは、大脳半球に発生する、成人に多い腫瘍である。上衣腫ependymomaは、脳室上衣細胞に形態が似ているので、この名称がついているが、成人では側脳室周辺に、小児では第四脳室周辺に発生する腫瘍が多い。脈絡叢(みゃくらくそう)乳頭腫choroid plexus papillomaは、脳室脈絡叢から発生する脳室内腫瘍で、真の神経膠腫とはいえないが、WHO分類では、神経上皮細胞起源の腫瘍として分類されている。髄芽腫medulloblastomaは、小脳虫部に発生し、きわめて未分化な腫瘍で、神経細胞と神経膠細胞の双方へ分化能力をもつ特異な腫瘍で、他の神経膠腫とはやや異なった腫瘍である。その他の神経膠腫としては神経節膠腫ganglioglioma、松果体細胞から発生する松果体細胞腫pineocytomaや松果体芽腫pineoblastomaなどがあるが、いずれもきわめてまれな脳腫瘍である。
小児では、髄芽腫が多く、全体の83%が小児期に発生している。同様に上衣腫と脈絡叢乳頭腫はともに小児期に半数が発生しており、いずれも小児の代表的な神経膠腫といいうる。一方膠芽腫と乏突起膠腫は成人に多い神経膠腫である。
[加川瑞夫]
多形性膠芽腫ともいわれ、代表的な悪性脳腫瘍である。30~50歳代の大脳半球に発生し、あらゆる治療に抵抗し、診断確定後1年以上生存する例はきわめて少なかった。5年生存率は8%にすぎなかったが、放射線治療と化学療法が十分に行われた最近の治療成績では30%まで向上してきている。
[加川瑞夫]
神経膠腫のうちもっとも頻度が高く、成人では大脳半球に、小児では小脳に発生しやすい。やや良性のもので、5~10年と生存するものもある。とくに小児の小脳に生じるものは、多くは嚢胞(のうほう)性であり、その嚢胞の一部にある壁在結節を摘出することで完治も期待できる。
[加川瑞夫]
代表的な小児悪性脳腫瘍で、その頻度は神経膠腫の10分の1程度である。さいわい限局されており、全摘出、亜全摘出が可能であり、かつ放射線治療や化学療法剤によく反応し、20年前では5年生存率が20%以下であつたが、近年では80%を超える5年生存率も報告されている。
[加川瑞夫]
脳の神経膠細胞から発生する
麻痺、手足のしびれ、言語障害など脳のある場所の機能障害が徐々に現れ、その後、
小児の場合、元気がない、突然吐く、歩き方や走り方がおかしい、体がふらつく、眼の位置がおかしい、テレビを見るとき顔を傾けるなどの症状がみられることがあります。また小児の場合は、脳のなかを循環する液体である
MRIで腫瘍の場所を診断します(図34)。一般的に腫瘍は神経の走行に沿って発育しますが、小児の場合、時に袋状に発育することがあります。どの種類の腫瘍かは、生検術か手術により切除された腫瘍を病理診断医が観察して診断します。
手術により腫瘍を切除する必要があります。患者さんの予後は、手術でどれだけ取れたかと、病理診断医により決定される腫瘍の種類により決まります。
多くの場合、腫瘍が周囲の神経に沿って発育しているため、手術後に放射線治療、化学療法、免疫療法が追加されます。化学療法や免疫療法は、放射線治療終了後も引き続き間隔をあけて繰り返し行われます。
松前 光紀
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 頭蓋内疾患による頭痛は,なんらかの神経症状を伴うことが普通である。髄膜腫のような腫瘤形成性の病変は頭痛を訴える前に局所症状を呈しやすいが,浸潤性の神経膠腫(こうしゆ)などは大脳半球全体を占めるほどになっても頭痛を訴えないことがある。転移性脳腫瘍もよく頭痛を伴うが,必ずしも激しいものでなく,また一定したものでもない。…
※「神経膠腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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