体内のカリウムは大部分が細胞のなかにあり、細胞の外(血液中など)に存在するのはわずかです。細胞のなかと外のカリウム濃度のバランスは重要で、このバランスが崩れると細胞はうまくはたらけなくなります。高カリウム血症とは血液中カリウム濃度が5.5mEq/ℓ以上の場合をいいますが、このような状態では細胞のはたらきは低下し、重い症状を引き起こします。
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②細胞内から血液中へのカリウムの移動とは、血液が酸性に傾いた時など、体の状態に応じてカリウムが細胞のなかから血液中に移動してきて生じます。
③カリウム負荷には、カリウムを大量に含む薬剤の使用や、やけどや大きなけがなどで細胞が一度にたくさん破壊された時などになります。
④腎臓からのカリウム排泄障害は、腎臓や尿細管が強く侵された時、あるいはアルドステロンというホルモンの欠乏により生じます。
血液中のカリウム濃度を測定して診断します。合併している病気からカリウム上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、
治療としては、原因になっている状態を改善することが大切ですが、高カリウム血症が悪化すれば生命に関わることもあるため、血液中のカリウムを減らす治療が加えられます。具体的には、まず食事でカリウム制限を行い、イオン交換樹脂製剤でカリウムの吸収を抑える一方で、利尿薬により尿中への排泄を促します。また、アルドステロン作用をもつホルモン薬を投与することもあります。
重症の高カリウム血症で緊急に治療が必要な時は、グルコン酸カルシウム(カルチコール)で重症の不整脈を予防したり、
重症の不整脈を引き起こすことがあるので、早めに精密検査と治療を行う必要があります。
崎原 哲
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
血中のカリウム濃度が上昇して1リットル当り5.5ミリ当量(5.5mEq/l)以上となり、細胞の働きが低下した状態。電解質代謝異常の代表的疾患とされる。原因の一つに腎臓(じんぞう)からのカリウム排泄(はいせつ)の低下があり、アルドステロンの欠乏や腎不全、尿細管の障害、カリウム蓄積を呈する利尿剤の使用などが原因で生ずる。これとは別に、細胞内からカリウムが遊離して血中など細胞外へ移行する場合があり、原因は血液が酸性に傾くアシドーシスや血管内溶血、筋肉壊死(えし)、周期性四肢麻痺(まひ)、サクシニルコリンなどの薬剤投与などである。また、やけどなどによる細胞破壊やカリウム含有薬剤の過剰摂取などによっても生ずる。駆血(くけつ)帯の締めすぎなど採血時の条件が原因となる場合もある。なお、血小板増多症や白血球増多症が原因でカリウム濃度の上昇がみられる偽性高カリウム血症もあるが、これは除外される。
症状としては、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、筋力低下、しびれや麻痺、心機能異常や不整脈などを伴う。血中カリウム濃度がさらに上昇し重症化すると致死性不整脈から心停止に陥る危険性がある。治療は、原因となる疾患があればこれを除去し、血中カリウムを低下させて細胞内へ移行させることを目的にグルコースやインスリンの点滴静注などを行う。重い腎機能不全などには透析治療が用いられる。
[編集部 2016年7月19日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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