高カリウム血症(読み)コウカリウムケッショウ(英語表記)Hyperkalemia

デジタル大辞泉 「高カリウム血症」の意味・読み・例文・類語

こうカリウム‐けっしょう〔カウ‐ケツシヤウ〕【高カリウム血症】

血液中のカリウム濃度が正常値を超えて上昇した状態腎臓障害や、腎機能に影響する薬剤・サプリメントの過剰摂取などで引き起こされる。重症化すると不整脈などがみられる。

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六訂版 家庭医学大全科 「高カリウム血症」の解説

高カリウム血症
こうカリウムけっしょう
Hyperkalemia
(内分泌系とビタミンの病気)

どんな病気か

 体内のカリウムは大部分が細胞のなかにあり、細胞の外(血液中など)に存在するのはわずかです。細胞のなかと外のカリウム濃度のバランスは重要で、このバランスが崩れると細胞はうまくはたらけなくなります。高カリウム血症とは血液中カリウム濃度が5.5mEq/ℓ以上の場合をいいますが、このような状態では細胞のはたらきは低下し、重い症状を引き起こします。

原因は何か

 原因は4つに大別されます(表4)。

偽性(ぎせい)高カリウム血症は採血した検体の問題で、真の病気ではありません。

②細胞内から血液中へのカリウムの移動とは、血液が酸性に傾いた時など、体の状態に応じてカリウムが細胞のなかから血液中に移動してきて生じます。

③カリウム負荷には、カリウムを大量に含む薬剤の使用や、やけどや大きなけがなどで細胞が一度にたくさん破壊された時などになります。

④腎臓からのカリウム排泄障害は、腎臓や尿細管が強く侵された時、あるいはアルドステロンというホルモンの欠乏により生じます。

症状の現れ方

 悪心(おしん)嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが主な症状です。カリウム値が7~8mEq/ℓを超えると危険な不整脈が現れ、心停止の危険性が生じます。

検査と診断

 血液中のカリウム濃度を測定して診断します。合併している病気からカリウム上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査腎機能検査、尿検査、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンの測定などが併せて行われ、詳しい原因も診断されます。

治療の方法

 治療としては、原因になっている状態を改善することが大切ですが、高カリウム血症が悪化すれば生命に関わることもあるため、血液中のカリウムを減らす治療が加えられます。具体的には、まず食事でカリウム制限を行い、イオン交換樹脂製剤でカリウムの吸収を抑える一方で、利尿薬により尿中への排泄を促します。また、アルドステロン作用をもつホルモン薬を投与することもあります。

 重症の高カリウム血症で緊急に治療が必要な時は、グルコン酸カルシウム(カルチコール)で重症の不整脈を予防したり、重曹(じゅうそう)を投与して酸性に傾いた血液を中和します。

病気に気づいたらどうする

 重症の不整脈を引き起こすことがあるので、早めに精密検査と治療を行う必要があります。

関連項目

 低カリウム血症急性副腎不全

崎原 哲


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高カリウム血症」の意味・わかりやすい解説

高カリウム血症
こうかりうむけっしょう

血中のカリウム濃度が上昇して1リットル当り5.5ミリ当量(5.5mEq/l)以上となり、細胞の働きが低下した状態。電解質代謝異常の代表的疾患とされる。原因の一つに腎臓(じんぞう)からのカリウム排泄(はいせつ)の低下があり、アルドステロンの欠乏や腎不全、尿細管の障害、カリウム蓄積を呈する利尿剤の使用などが原因で生ずる。これとは別に、細胞内からカリウムが遊離して血中など細胞外へ移行する場合があり、原因は血液が酸性に傾くアシドーシスや血管内溶血、筋肉壊死(えし)、周期性四肢麻痺(まひ)、サクシニルコリンなどの薬剤投与などである。また、やけどなどによる細胞破壊やカリウム含有薬剤の過剰摂取などによっても生ずる。駆血(くけつ)帯の締めすぎなど採血時の条件が原因となる場合もある。なお、血小板増多症や白血球増多症が原因でカリウム濃度の上昇がみられる偽性高カリウム血症もあるが、これは除外される。

 症状としては、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、筋力低下、しびれや麻痺、心機能異常や不整脈などを伴う。血中カリウム濃度がさらに上昇し重症化すると致死性不整脈から心停止に陥る危険性がある。治療は、原因となる疾患があればこれを除去し、血中カリウムを低下させて細胞内へ移行させることを目的にグルコースやインスリンの点滴静注などを行う。重い腎機能不全などには透析治療が用いられる。

[編集部 2016年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高カリウム血症」の意味・わかりやすい解説

高カリウム血症
こうカリウムけっしょう
hyperkalemia

カリウム過剰血症ともいう。血液中にカリウムが過量に含まれる状態。重症腎炎,尿毒症,カリウム剤の急速過剰投与,保存血大量輸血,やけど,溶血,アジソン病,抗アルドステロン剤の投与などが原因となる。高カリウム血症があると,筋肉の弛緩性麻痺,四肢の知覚異常,下肢重感,心電図の変化などが現れる。

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栄養・生化学辞典 「高カリウム血症」の解説

高カリウム血症

 →高カリウム血

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