知恵蔵 「高分子ポリマー」の解説
高分子ポリマー
ポリマー(重合体)とは、モノマー(単量体)に対する用語で、モノマーが多数繰り返して結合してできた物質を指す。高分子は一般にポリマーを指す。
モノマーがどれくらい結合すればポリマーと呼ぶかについては、明確な定義はない。一般には数百個程度以上であればポリマーと呼び、それ以下であればオリゴマーと呼ぶことが多い。高分子ポリマーの分子量は概ね1万以上である。
高分子ポリマーは、一次構造(モノマーの種類・つながり方)、二次構造(局所的な立体構造。αらせん、βシート構造など)、高次構造(三次元立体構造。二重らせん、球晶など)といった階層的構造からなり、低次から高次までの構造のすべてが高分子ポリマーの物理化学的性質に影響する。従って、高分子ポリマーの性質は、構成要素であるモノマーとは全く異なる。
1953年、ドイツの化学者、ヘルマン・シュタウディンガーは、鎖状高分子化合物の研究で高分子の存在を明らかにして「高分子説」を唱え、ノーベル化学賞を受賞。日本では、2000年に白川英樹氏が「伝導性ポリマーの発見と開発」、02年には田中耕一氏が「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」と、それぞれ高分子化学領域の研究によりノーベル化学賞を受賞しており、高分子化学は日本が最も国際競争力を持つ学問領域の一つである。
11年3月11日に発生した東日本大震災によって被害を受けた福島第一原子力発電所では、2号機の取水口付近にある作業用の穴(ピット)にたまった高濃度の放射性物質汚染水が海に流出した。その対策として、ある種の高分子ポリマーが、ピット壁面の亀裂を防ぐために4月3日から投入されたが、奏功しなかった。水を吸収すると数十倍に膨張し、吸収した水分を固める作用がある高分子ポリマーは、紙おむつや生理用ナプキンなどに使われており、原子力安全・保安院も3日の会見で、今回使われる高分子ポリマーは紙おむつに使われているものと同じだと明らかにした。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報