鳥刺し(読み)とりさし

精選版 日本国語大辞典 「鳥刺し」の意味・読み・例文・類語

とり‐さし【鳥刺・鳥指】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 細い竹竿などの先端に鳥黐(とりもち)を塗りつけ、小鳥を捕えること。また、その人。特に、小鳥を捕えてそれを売るのを業とした人。
      1. 鳥刺<b>[ 一 ]</b><b>①</b>〈三十二番職人歌合〉
        鳥刺[ 一 ]〈三十二番職人歌合〉
      2. [初出の実例]「右 とりさし 春は又ところも花の千本にみせをくたなの鳥のいろいろ」(出典:三十二番職人歌合(1494頃)三番)
    2. 江戸幕府の御鷹の餌にする小鳥を請け負った者。また、その配下
    3. 江戸時代の遊戯の一つ。殿様・用人・鳥刺し各一枚、他に種々の鳥の絵を描いた札一三枚、合計一六枚の札から成り、殿様の命により用人が鳥刺しに鳥を捕えさせる仕組みになっている。
      1. [初出の実例]「是れから鳥(トリ)さしか、お茶坊主をして遊ばうと」(出典歌舞伎・五十三駅扇宿附(岡崎の猫)(1887)五幕)
    4. 民俗芸能の一つ。の動作をおもしろおかしく舞踊化したもの。また、万歳の一つ。大夫が鳥を刺すまねをし、才蔵が鳥づくしの歌をうたうもの。鳥刺し舞。鳥刺し踊り。
    5. 鳥肉刺身
  2. [ 2 ] 歌舞伎所作事。清元。三升屋二三治作詞。初世清元斎兵衛作曲。天保二年(一八三一)江戸市村座初演。本名題「祇園町一力の段」。二世関三十郎の太鼓持ち次郎左衛門が、鳥づくしの文句で、鳥刺しの振りを座興に踊る。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥刺し」の意味・わかりやすい解説

鳥刺し
とりさし

鷹狩(たかがり)用の鷹の餌(え)となるスズメハトなどの餌鳥(えとり)をとる小者。餌差(えさ)しともいう。江戸幕府では御鷹匠に所属、御鳥見の下で隠密を兼ねたこともあるといわれ、江戸・小石川などの拝領地に住んだ。頭巾(ずきん)に半纏股引(はんてんももひき)姿で、腰に小鳥を入れる籠(かご)、とりもち入れの小箱を提げ、大小両刀をさす。二間(約3.6メートル)余の竿先(さおさき)にとりもちを塗り、笛を吹いて、飛んでくる小鳥を刺す。寺社境内田畑武家屋敷の近辺は禁じられていた。のちに鳥刺しは請負御用商人の手に属した。

稲垣史生

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