日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥学」の意味・わかりやすい解説
鳥学
ちょうがく
ornithology
鳥類を研究対象とする生物学の分野。鳥類学ともいうが、鳥学のほうが普通に使われる。鳥類の形態、生理、発生、分布、生態、行動、遺伝、進化などの研究はもとより、鳥類の利用(応用鳥学)や保護の研究まで含む。鳥類の研究は、近代生物学の発展にあらゆる面で非常に大きく寄与したが、とくに重要な貢献として、進化、生物分布、行動学、自然保護をあげうるであろう。ダーウィンが生物進化の考えを抱くに至ったのは、ビーグル号で航海中に、ガラパゴス諸島でフィンチ類を研究したのが、大きな動機だといわれている。また、鳥の地理的変異の研究が、種の分化の理論に大きな影響を与えた。生物分布では、イギリスのスクレーターP. L. Sclaterの鳥の分布に関する研究が世界の生物地理区に発展し、各地の鳥相の研究は、群集生態学のみならず、種間の関係や適応の問題の研究に貢献した。一方、鳥は多くの人に親しまれ、野外での観察も比較的容易であるため、鳥類の観察が比較行動学の基礎となった。自然保護において鳥の研究が果たした役割は、改めて強調するまでもない。鳥学の研究は、各種の大学、博物館、研究所で行われ、またアマチュアの貢献も著しい。鳥学専門の学会は鳥学会とよばれ、日本には日本鳥学会がある。
[森岡弘之]