鵞口瘡(読み)がこうそう(その他表記)Thrush

六訂版 家庭医学大全科 「鵞口瘡」の解説

鵞口瘡
がこうそう
Thrush
(子どもの病気)

どんな病気か

 カンジダアルビカンスというカビによる口腔内の感染により、口のなかに白い斑点のような塊(白苔(はくたい))が付着する乳児期の病気です。

原因は何か

 カンジダアルビカンスが乳児の口に入り、感染します。

 新生時期は産道からの感染で、乳児期には、哺乳時にカンジダの付着した手指や乳頭、哺乳びんから感染します。

 幼児期以降ではほとんど起こりません。

症状の現れ方

 口腔粘膜、舌、口蓋に白い斑点のようなミルクかすに似た塊が付着します。ミルクかすの場合はこするとすぐに取れますが、鵞口瘡の場合はこすってもなかなか取れず、無理に取ると出血します。ほとんどが無症状ですが、たまに痛みのために哺乳量が減ることがあります。

 口腔内のカンジダを飲み込み、便中に出ることで、カンジダによるおむつかぶれを合併することもあります。

検査と診断

 視診と、こすっても取れにくいということで診断します。採取した白斑に水酸化カリをたらし、顕微鏡でカンジダを観察することで確認します。

治療の方法

 軽症で無症状のことが多いため、治療せずに経過観察します。

 範囲が広かったりびらんによる痛みのため哺乳に影響する場合は、ファンギゾンシロップを1日3~4回塗ります。通常、数日で治りますが、繰り返す場合もあります。

 鵞口瘡になったら、手指や乳頭の清潔や、哺乳びんの消毒に注意が必要です。

病気に気づいたらどうする

 口のなかに取れにくいミルクかすのようなものがあったら、医療機関を受診してください。

竹内 一夫

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改訂新版 世界大百科事典 「鵞口瘡」の意味・わかりやすい解説

鵞口瘡 (がこうそう)
thrush

口腔カンジダ症の初期で病変が口腔の内表面に起こるものをいい,急性偽膜口腔カンジダ症とも呼ばれる。最初,白色ないし灰白色の点状の苔状物が生じるが,これははがれやすく,その下には発赤した粘膜面がみられる。その後,苔状物は比較的急速に広がり,厚さを増して偽膜となり,はがれにくくなる。頰粘膜,舌,口唇にできやすいが,口腔粘膜全体から咽頭,喉頭,食道へと進むこともある。病原菌真菌のカンジダ・アルビカンスCandida albicanceが最も多い。この真菌は正常人の口腔内にも非病原菌として存在している。しかし,新生児,老人,妊婦など体の抵抗力が低下しているときや,口腔内に傷,局所的病変があったり,抗生物質,制癌剤,副腎皮質ホルモン剤の長期使用などが誘因となって,この菌が病原性をもつようになる。小児では産道感染が疑われる新生児に,また乳児期に増加するが,幼児期を過ぎると激減する。診断は,苛性カリ法(病変部をかきとり,水酸化カリウムを1滴おとして顕微鏡でみると,菌糸がみつかる)が有効である。治療には,ピオクタニン,ヨードグリセリンを局所に塗布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鵞口瘡」の意味・わかりやすい解説

鵞口瘡
がこうそう

カンジダ・アルビカンスCandida albicansなど真菌(カビ)の一種によっておこされる疾患をいい、口腔(こうくう)粘膜にみられる。カンジダ症の一つ。灰白色あるいはクリーム色の斑(はん)状を呈し、牛乳の濁り粕(かす)のような外観で、容易にふき取れるが、跡に滑らかな赤いびらん面が残る。似た外観を呈する病変が細菌やウイルスでもおこされる。抵抗力の弱い栄養失調の乳幼児、ことに未熟児や重篤患者にできやすい。治療にはアムホテリシンB、ナイスタチンクロトリマゾールなど抗真菌剤の液剤、軟膏(なんこう)、トローチ、乳液などを局所的に使用するが、内服を併用する場合もある。また、重曹水あるいは10万倍ゲンチアナ紫によるうがいや洗浄もよい。予防には病室、病衣、治療スタッフの手などの消毒法の励行が有効である。

[福嶋孝吉]

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百科事典マイペディア 「鵞口瘡」の意味・わかりやすい解説

鵞口瘡【がこうそう】

カンジダというカビの一種の増殖による疾患。主として乳児の口腔粘膜・歯ぐきに乳かす様の白いものができる。カンジダは口腔内常在菌で,放置しても2〜4週間で治癒(ちゆ)し心配ない。飲食物摂取後,湯ざましですすぐくらいでよい。栄養障害時,抗生物質投与時に菌交代症として出現した場合は医師の指示を要する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鵞口瘡」の意味・わかりやすい解説

鵞口瘡
がこうそう
thrush

口腔カンジダともいう。カンジダ・アルビカンス Candida albicansという真菌の一種が感染して口の中に異常増殖して起る粘膜の病気。初め口の中の頬部や口蓋粘膜に数個の乳白色でやや隆起性の斑点が現れ,互いに融合する傾向を示す。口腔から食道や鼻,咽頭に広がることもある。栄養障害の乳幼児にみられることが多く,成人では癌,結核などにかかって高度の全身性の衰弱をきたしたときや,抗生物質を使用したあとに起ることがあるが,一般に予後は良好。抗真菌剤がよく効く。

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