12世紀ルネサンス(その他表記)Renaissance of the 12th century

山川 世界史小辞典 改訂新版 「12世紀ルネサンス」の解説

12世紀ルネサンス(じゅうにせいきルネサンス)
Renaissance of the 12th century

西欧の12世紀における知の復興運動のこと。シャルトルやパリなどの司教座付属学校における自由学芸教育の活性化から始まった。自由学芸への関心が高まった第一の理由は,11世紀後半以降,都市や国家,また教会において,文書による統治システムが確立し,ラテン語の文書作成者の需要が増したことにある。さらに世俗社会で,ローマ法が法の典拠として用いられるようになると,ローマ法学への関心が高まり,ボローニャ大学などで法学教育が盛んになった。教会でも,ローマ法にならって教会法が体系化され,教会法学もこの時期から発展した。またグレゴリウス改革以降の教会改革の潮流から,聖書教父の著作を体系的に理解しようとして,神学も12世紀に発展した。こうした西欧の内部で始まった知的復興は,同時代のスペインやシチリアにおいて活発になされたギリシア語やアラビア語の文献のラテン語翻訳が流入すると,さらに大きく飛躍することになった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「12世紀ルネサンス」の解説

12世紀ルネサンス
じゅうにせいきルネサンス

アメリカの歴史家ハスキンズ(1870〜1937)の命名による中世ヨーロッパの文化的革新運動の呼称
「大翻訳運動」とも称され,アリストテレス哲学イスラーム科学がラテン語に翻訳され,西ヨーロッパ古典古代を再発見した時代を12世紀と考える学説ラテン文学興隆やローマ法の復活,サレルノ,ボローニャなどの大学の発展にみられるラテン中世文化の花開いた時代を積極的の評価するもの。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の12世紀ルネサンスの言及

【地中海】より

…ユークリッド,プトレマイオス,あるいはアビセンナ(イブン・シーナー)などもギリシア語,アラビア語からラテン語に訳された。スペインやイタリアにおけるこのような大規模な翻訳活動があって初めて〈12世紀ルネサンス〉と呼ばれるヨーロッパの文化的革新が生じえたのである。自然科学や哲学だけでなく,実用的な数学や商業技術も導入された。…

【中世科学】より

…この〈中世ラテン科学〉は,ギリシア,アラビアの学術文献が精力的にラテン語訳された12世紀の大翻訳時代を境に大きく前期と後期に分けられる。さらに前期は3~4世紀の〈教父の時代〉,5~7世紀の〈ラテン編纂家の時代〉,8~9世紀の〈カロリング・ルネサンスの時代〉,10~11世紀の〈アラビアとの接触の時代〉に,後期は〈12世紀ルネサンスの時代〉,13世紀の〈自立と総合の時代〉,14世紀の〈ガリレイの先駆者の時代〉に分けられよう。 3~4世紀に,キリスト教は他宗教を圧してヨーロッパに君臨する基盤を整えるが,このときギリシアの科学や哲学はキリスト教教父たちの手にうつり,この立場から再考察の対象となる。…

※「12世紀ルネサンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android