7年ぶりの南北首脳会談(読み)7ねんぶりのなんぼくしゅのうかいだん/しちねんぶりのなんぼくしゅのうかいだん/7ねんぶりのなんぼくちょうせんしゅのうかいだん/しちねんぶりのなんぼくちょうせんしゅのうかいだん

知恵蔵 「7年ぶりの南北首脳会談」の解説

7年ぶりの南北(朝鮮)首脳会談

2007年10月2日、韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が北朝鮮の首都・平壌(ピョンヤン)を訪れ、金正日(キム・ジョンイル)総書記(国防委員長)の出迎えを受けた。南北朝鮮の両首脳は翌3日の午前と午後に分けて会談し、その結果は、両者が署名した「南北(北南)関係発展と平和繁栄のための宣言」という名称で4日に発表された。南北首脳会談は、朝鮮半島の分断史上初めての開催となった00年6月の金大中(キム・デジュン)大統領―金総書記に次いで7年ぶり2回目である。金大中氏が南北間直行の空路を利用したのに対し、盧大統領は板門店(パンムンジョム)近くで南北を結ぶ道路を使い、軍事境界線では車を降り、歩いて北側に入った。会談への地ならしは07年7月から本格化し、盧大統領の腹心である金万福(キム・マンボク)国家情報院長が8月に極秘訪朝して、金総書記の側近の金養建(キム・ヤンゴン)朝鮮労働党統一戦線部長との間で開催に合意した。8月8日に「盧大統領が8月28日から30日まで平壌を訪れて金総書記と会談する」と南北が同時発表した。しかし、北朝鮮で深刻な水害があったことを理由に北側が延期を求め、南北は同月18日、10月の開催で再度合意した。首脳会談を受けた「宣言」は8項からなっている。(1)2000年の首脳会談時の南北共同宣言を積極的に具現化、(2)相互尊重と信頼関係へ転換、(3)緊張緩和と平和保障へ協力。西海(黄海のこと)での衝突防止のため共同漁業水域を設定、平和水域にする方法など協議、(4)朝鮮戦争の休戦状態を終わらせ、恒久的平和体制を構築すべきとの認識で一致。直接関係する3者または4者の首脳が朝鮮半島で会って終戦宣言をするために協力。核問題の6者(6カ国)協議の共同声明・合意の履行へともに努力、(5)経済協力事業の発展。西海平和協力特別地帯を設置し、経済特区建設など推進。開城(ケソン)工業団地の第2段階開発着手。鉄道・道路の改修協議。造船協力団地建設、(6)社会文化分野の交流・協力発展。白頭山(ペクトゥサン)―ソウル直航路線開設。08年北京五輪に鉄道京義線(キョンウィソン)を利用して南北応援団派遣、(7)離散家族再会事業拡大など人道的協力事業の推進、(8)南北両首脳が随時会って懸案協議、などをうたった。00年首脳会談の南北共同宣言が統一問題の自主的解決や、民族経済の均衡発展、交流・協力など5項目を極めて簡潔に取り上げたのに対し、今回の宣言はより詳しく具体的になった。軍事的緊張緩和や平和体制問題への言及は00年宣言にはなかったものだ。また経済協力への細かな記述が目立つ。ただ、こうした事業がこれで順調に進むわけではない。宣言に記された通り11月には、15年ぶりの南北首相会談がソウルで、7年ぶりの国防相会談が平壌でそれぞれ開かれた。宣言履行の意思を確認し合い、実務協議の日程などを決めたが、軍事部門が密接にからむ黄海の「平和協力特別地帯」や共同漁業水域の設定問題では対立が解けなかった。盧大統領の残り任期が5カ月を切る段階での南北首脳会談で、盧大統領には、政権の対北朝鮮政策である「平和繁栄政策」の実績づくりが大きな狙いであった。金総書記からすれば、12月の韓国大統領選で野党ハンナラ党が政権を奪っても、韓国からの経済協力・支援の基本的な構図に強い逆流が起きないよう、事前に枠を固めておきたいとの思惑があったとみられる。盧大統領は10月3日の午前の会談後、「改革・開放という言葉に対する不信感と拒否感を金委員長との会談で感じた」と語った。金総書記は、開城工業団地に進出している韓国企業がまだ中小メーカーにとどまり、先端技術を有する企業や大企業が及び腰であることに不満を示したといわれる。また、日朝対話を進めるとする福田首相のメッセージを盧大統領が伝えると、金総書記は「首相の意思を評価し期待する」と述べたという。日本人拉致(らち)問題に関し「生存者はすべて日本に帰した」と語ったともされる。今回の南北首脳会談とは直接の関係はないが、韓国企業・現代峨山が事業主体になり、高麗(コリョ)王朝時代の首都である開城を韓国側から日帰りで巡るツアーが12月5日から実施されている。

(小菅幸一 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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