日本大百科全書(ニッポニカ) 「MR(医薬情報担当者)」の意味・わかりやすい解説
MR(医薬情報担当者)
えむあーる
medical representative
医薬情報担当者のこと。多くは製薬企業に属し、自社の医療用医薬品の情報を医師や薬剤師に提供し、副作用情報も収集、提供する。日本でも100年の歴史があるといわれるこうした営業は、プロパー(propagandist=宣伝者)とよばれていたが、1990年代からMRに変わってきている。プロパー時代は自社製品の売込みが主で、毎日、各病院や診療所を回り、販売促進のために医師のご機嫌取りや接待、サービスに明け暮れた。論文のコピー取りから家族の買い物の手伝いまで、さまざまなサービスを競った、といわれている。当時のプロパーは価格決定を任されていたために過度の割引である「添付販売」も横行、医師が不要な薬を処方する誘引にもなった。
これらに対する批判を受けて日本製薬工業協会は1993年(平成5)に「医薬情報担当者の行動基準」を制定、以後はMRの呼称に一本化した。この行動基準では、金銭や物品の提供を禁止し、MRは医学・薬学知識を習得し、正しい情報を有効性、安全性に偏りなく公平に提供することを求めている。また、1997年からは業界の「MR認定試験制度」を創設、病医院回りのMRはこの有資格者がほとんどである。
MRはプロパーと違い、目的は製品の販売ではなく、薬の情報提供と情報収集とされている。薬の種類は膨大であり、その副作用や適正使用情報はあまりにも多い。医師や薬剤師が正しく薬を扱うには約6万人といわれるMRの活動が不可欠とされている。
[田辺 功]