写真フィルムがX線に感ずることを利用して写真像をつくる方法。X線写真は1895年X線が発見された直後から医学的診断の目的を主として研究が進められ,1913年に最初の医療用X線フィルムがコダック社から発売された。また,1912年ドイツのM.T.F.vonラウエによってX線回折写真の方法が考案され,X線写真が結晶構造解析に利用されるようになった。30年代にはX線写真による工業材料の非破壊検査(X線探傷)が実用された。
X線は物体を透過する性質が強いため,X線写真によって人体や工業材料などの物体内部の状況を画像として観察することができる。X線写真撮影では,一般に被検物体の一方の側にX線線源を置き,物体の他方の側にフィルムを置いて,物体を透過したX線をフィルム上に記録するのでX線写真像は物体の影絵写真になる。X線の写真作用は概して効率が低く,写真撮影には相当量のX線線量が必要である。医学診断の場合,人体に照射されるX線線量はなるべく少ないことが望まれ,このため蛍光スクリーン(または蛍光増感紙)をX線用フィルムの両面に密着してX線写真撮影を行う。蛍光スクリーンは,X線エネルギーを吸収して光に変換し,X線の効率を100倍以上高くすることができる。医療用X線写真の撮影方法には,写真フィルムに直接X線を照射する直接撮影法と,X線による像を蛍光板上につくり,この蛍光の像を小型カメラで撮影する間接撮影法とがあり,集団検診には間接撮影法が多く用いられる。これらの撮影方法にしたがって使用するフィルムも異なり,直接撮影の場合には,フィルムベースの両面に写真乳剤を塗布した直接撮影用フィルムを用い,このうち蛍光スクリーンを使用する場合はその蛍光体の発する光によく感ずるスクリーンタイプフィルムを使う。間接撮影の場合には蛍光板の発する緑色の光によく感ずる間接撮影用フィルムを使う。
執筆者:友田 冝忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…放射線を物質に照射し,透過撮影図をフィルム上に記録して,被検体の内部における密度の不均一性を,その透過度の差から見いだし,金属構造物の内部構造や欠陥部を検査する手法をいう。超音波探傷法,磁気探傷法などと合わせて非破壊検査の重要な手法である。工業用X線装置からの200~400kVのX線を用いることが多いが,透過力の強いγ線を用いることもあり,この場合にはγ線ラジオグラフィーと呼ばれる。γ線ラジオグラフィーはX線ラジオグラフィーと比べ,移動が簡単でどこでも非破壊検査を行うことができるという特徴がある。…
…(5)は可視光線以外の電磁波を利用する撮影法。赤外線(赤外線写真),紫外線(紫外線写真),X線(X線写真),γ線,β線の利用がおもなもの。可視光線ではあるが,シュリーレン写真や偏光写真も,電磁波の特徴を巧みに利用した観察方法となっている。…
…このプロセスで得る画像は,原則的に二次元平面上の可視像の形であることが写真の特徴といえる。
[写真像の形成]
一般写真撮影,映画,X線写真などに使われるフィルムは,ハロゲン化銀(臭化銀)に微量のヨウ化銀を混ぜてゼラチン中に分散させた写真乳剤を,支持体フィルムに塗布,乾燥したものである。写真撮影によってフィルムを露光するとハロゲン化銀は光化学変化を起こしてハロゲン化銀結晶中に銀原子集団を作るが,この状態では乳剤の外観の変化は起こらず潜像が形成された状態である。…
※「X線写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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