改訂新版 世界大百科事典 「X線探傷」の意味・わかりやすい解説
X線探傷 (エックスせんたんしょう)
X-ray inspection
材料や部材を破壊せずに,その内部の欠陥を検査する非破壊検査法の一つ。X線が物質を透過することを利用し,検査対象にX線を照射し,透過像を工業用X線フィルムに写す。割れ目や空洞があればそれだけ吸収が少ないし,異物があれば吸収能に差がある。こういったX線の吸収の違いがフィルムの上で濃淡となって表れるので,それから内部の状況を判断する。医師がX線で人体の検査をするのと同じ原理である。写真から欠陥の大きさや性状を決めるので質のよい写真を撮らなければならないし,写真からの判断には経験のある検査員が必要となる。木材,金属の小物部品,軽合金などX線が透過しやすいものは,加速電圧130kV以下の低エネルギーの軟X線装置が,鋼部品や溶接部には300kVくらいまでのX線装置が使われ,とくに大物の検査には,高エネルギーのX線を発生する線形加速器やベータトロンが使われたり,また,60Coや192Irなどの放射性同位体から出ているγ線を利用したりする。検査は工場で行われるだけではなく,X線装置や線源を現場にもっていって,構造物の建設現場で溶接施工後の溶接部の健全性の判定にも広く使われている。また,物を作ったときの品質の確認のためだけでなく,しばらく使ったあとで内部に欠陥が生じていないかどうかを調べる供用期間中の検査としても重要である。
執筆者:大久保 忠恒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報