X線望遠鏡(読み)エックスセンボウエンキョウ(その他表記)X-ray telescope

デジタル大辞泉 「X線望遠鏡」の意味・読み・例文・類語

エックスせん‐ぼうえんきょう〔‐バウヱンキヤウ〕【X線望遠鏡】

X-ray telescope天体の発するX線観測する装置。X線は地球大気を透過せず、光学レンズも透過しないので、細い金属線を平行多数配置した特殊装置を人工衛星に搭載して大気圏外で観測を行う。

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改訂新版 世界大百科事典 「X線望遠鏡」の意味・わかりやすい解説

X線望遠鏡 (エックスせんぼうえんきょう)
X-ray telescope

気球,ロケット,人工衛星などの飛翔(ひしよう)体に搭載して大気圏外からX線天体の位置を決め,その大きさ,形などを測る装置。高い精度,角分解能を必要とする場合に使われる方法は今のところ二つある。その一つはすだれコリメーターと呼ばれるものである。2枚以上のすだれ状の金属マスクをとおして天空が縞状に見えることを利用する。飛翔体の姿勢が変わるとともに天体はこの縞に見え隠れする。そのようすから天体の位置,大きさ,形を測るのである。こうしてX線天文学の初期にはさそり座のSco X-1の位置が精密に決められ,初めてX線星に光学天体が対応することが見いだされた。はくちょう座のCyg X-1の位置決定はそれがブラックホールの有力候補であることを推定する糸口になった。100個を超えるX線星が光学的に同定されている。またすだれコリメーターによるX線源の像合成はかに星雲や人工衛星〈ひのとり〉と〈ようこう〉による太陽X線フレアの構造の決定に使われている。

 もう一つの方法は数keV以下の軟エネルギー領域では金属表面に斜入射するX線が全反射することを利用するX線の反射望遠鏡である。これはX線のエネルギー,波長制限はあるが結像式の本格的な望遠鏡できわめて高い感度をもっている。本格的には大型天文衛星HEAO-2(アインシュタイン衛星)が焦点距離3.4m,口径56cmの望遠鏡によって1978-81年にわたって活躍し,X線天文学に新しい局面を開いた。日本のX線天文衛星としては87年打上げの〈ぎんが〉,91年打上げの太陽X線観測衛星〈ようこう〉,93年打上げの〈あすか〉がX線反射望遠鏡を搭載している。
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百科事典マイペディア 「X線望遠鏡」の意味・わかりやすい解説

X線望遠鏡【エックスせんぼうえんきょう】

天体から放射されるX線を検出するための装置。比例計数管,半導体検出器などのX線検出器と一定の方向からやってくるX線のみが入射するようにするためのコリメーターとを組み合わせたものや,反射鏡によってX線を集めるX線反射望遠鏡が主。

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