X線造影剤(読み)えっくすせんぞうえいざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「X線造影剤」の意味・わかりやすい解説

X線造影剤
えっくすせんぞうえいざい

単純X線撮影ではよく写らない部位に注入して目的の臓器や組織の明確なX線像を得るために使われる診断用薬剤のことで、単に造影剤ともいう。人為的にX線に対する吸収差を高めるわけで、物理的にX線吸収の多い陽性造影剤(バリウムヨードなどの製剤)とX線吸収の少ない陰性造影剤(空気、酸素、二酸化炭素、窒素などの気体)がある。

 陽性造影剤には粉末、液剤、錠剤、カプセル剤、注射剤(油性、水性)があり、薬剤の種類と使用目的によって選択される。消化管造影検査に使われる硫酸バリウムは、日本薬局方による粉末を水に懸濁するか、あらかじめ加工されて水に懸濁された液剤を用い、内服あるいは注腸する。同様の目的に「水性ディオノジール」や「ガストログラフィン液」がある。胆嚢(たんのう)・胆管造影には内服用として「テレパーク錠」、「オスビル錠」、「ビロプチンカプセル」、「タイロペークカプセル」があり、静脈注射用には「ビリグラフィン」、「エンドグラフィン」、「コレグラフィン」がある。血管造影や腎臓(じんぞう)・尿路系造影には「アンギオコンレイ」、「コンレイ」、「コンラキシンL・H・D」、「アギオグラフィン」、「ウログラフィン」、「ウロビゾン」などが注射あるいはゾンデによる膀胱(ぼうこう)や尿道への注入で使用される。気管支造影には「ハイトラスト」、「油性ディオノジール」、「マイジール」が用いられ、子宮・卵管造影には「リピオドールウルトラフルイド」が使われるが、これはリンパ系、精嚢唾液腺(だえきせん)にも用いられる。これらの造影剤にはヨード化合物が多く、しかも高濃度のものが注射されることから、副作用として過敏症、ショックをおこすことが多い。

 陰性造影剤はおもに脳室や胸膜腔(くう)などに使われるが、とくに二重造影法として陽性造影剤に併用される場合が多い。たとえば硫酸バリウムと発泡剤(沸騰酸)による二酸化炭素で胃の二重造影を行うほか、大腸造影には経肛門(こうもん)的に挿入したゾンデから空気を送って二重造影が行われる。

[幸保文治]

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百科事典マイペディア 「X線造影剤」の意味・わかりやすい解説

X線造影剤【エックスせんぞうえいざい】

X線検査において気管支,血管,消化管,泌尿生殖器などの臓器の外側または内側にX線吸収率の著しく異なる薬剤を注入すると,これらの臓器の内腔や外縁をX線像上に見ることができる。この薬剤をX線造影剤という。消化管には一般に硫酸バリウム,気管支・脊髄腔・子宮腔などにはヨード化油,血管・尿路には有機ヨウ素化合物,胆嚢(たんのう)にはテトラヨードフェノールフタレイン等,膀胱(ぼうこう)にはヨウ化ナトリウム,臭化ナトリウムが用いられる。
→関連項目X線X線二重造影法脳動脈写ヘリカルCT

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改訂新版 世界大百科事典 「X線造影剤」の意味・わかりやすい解説

X線造影剤 (エックスせんぞうえいざい)

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世界大百科事典(旧版)内のX線造影剤の言及

【造影剤】より

…X線造影剤ともいう。X線検査に際し,臓器の内部あるいは周囲に〈X線吸収差の大きくなるような物質〉を与え,目的部位にコントラストをつけて診断を容易にする薬剤をいう。…

※「X線造影剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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