YS11(読み)ワイエスじゅういち

改訂新版 世界大百科事典 「YS11」の意味・わかりやすい解説

YS11 (ワイエスじゅういち)

第2次世界大戦後の日本で初めて開発された双発ターボプロップ輸送機。エンジン,プロペラその他若干の装備品を除いて国内のメーカーが協同して設計製作した。YSは設計にあたった輸送機設計協会の頭文字,11は機体1号,エンジン1号の意味だから,本来は“いちいち”と読むのが正しい。原型機は1962年8月30日に初飛行。戦後最初の国産輸送機のため開発は難航したが,ターボプロップ双発,大直径プロペラをつけて低速の推力を増大して離陸滑走距離を1000m程度に下げ,客席数を60(最大64)と当時の中型輸送機より10席近く多くしたため,国内はもちろん,アメリカを含む外国からも注文があった。最終的な生産数は182機,うち76機が13ヵ国に輸出された。なお,生産は政府民間共同出資の日本航空機製造株式会社があたり,この英語頭文字NAMCをつけて型式をNAMC YS11A(Aは生産機)と呼ぶ。機体型式は低翼単葉のふつうのものだが,脚はエンジン短胴部へ入れ,胴体が太く,主翼アスペクト比の大きい直線テーパー翼を採用形態の特徴として,かなり大きい背びれをつけ,それに続いて台形垂直尾翼があり,胴体後端下面がはね上がっている。エンジンはロールス・ロイスの3060馬力ターボプロップ双発,機体全幅32.0m,全長26.3m,巡航速度474km/h。
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百科事典マイペディア 「YS11」の意味・わかりやすい解説

YS11【ワイエスじゅういち】

日本で開発(第2次大戦後初)された双発ターボプロップ短距離中型輸送機。YSは,国産民間機設置のため1956年通商産業省(当時)が設立した財団法人輸送機設計研究協会(東京・駒場に設置)の名称に由来する。1962年8月初飛行,1965年4月国内線に就航。製作は日本航空機製造を中心に各航空機メーカーの協力による。短距離離着陸性などすぐれた特長をもち,ほぼ7機種のシリーズが生産された。1972年生産中止までに182機つくられ,うち76機は米国東南アジア中南米に輸出された。2006年9月,日本国内の民間定期路線から引退
→関連項目航空宇宙工業旅客機

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世界大百科事典(旧版)内のYS11の言及

【航空宇宙工業】より

…以来25年間,日本の航空機工業はアメリカの強力な支援を受けながら,戦闘機,軍用機,エンジンなどのライセンス生産を懸命にこなして,新しい技術の修得に努めた。その成果は,まずジェット練習機T1の独自開発,次いで,初の国産旅客機であるYS11型機となって結実した。YS11は64‐74年に182機生産されただけで,事業としては失敗に終わったが,その後の航空機技術の発展に大きく貢献し,1965年以降,各種の国産機の開発が推進されるようになった(たとえば三菱重工業のMU2型機)。…

【日本航空機製造[株]】より

…日本初の国産の民間航空輸送機YS11の開発・生産・販売のために,1959年に〈航空機工業振興法〉(1958公布)に基づき設立された半官半民の特殊法人。83年解散。…

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