ワクチン(読み)わくちん(その他表記)vaccine

翻訳|vaccine

デジタル大辞泉 「ワクチン」の意味・読み・例文・類語

ワクチン(vaccine)

《牝牛の意のラテン語に由来し、牛痘の意》生体に免疫をつくらせて感染症を予防するために用いられる抗原。病原体あるいは細菌毒素の毒性を弱めるか失わせるかし、抗原性だけ残したもの。不活化または死菌ワクチン生ワクチントキソイドなどがある。ジェンナー痘瘡とうそうの予防に牛痘を用いたことに始まる。
ワクチンプログラム」「ワクチンソフト」の略。

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共同通信ニュース用語解説 「ワクチン」の解説

ワクチン

政府は新型コロナウイルス感染症のワクチンに関し、米ファイザーとモデルナ、英アストラゼネカから計約3億1千万回分の供給を受ける契約を結んでいる。1人2回の接種を想定しており、計1億5700万人分となる。無料で接種できる。医療従事者への先行接種を進め、その後、高齢者への接種を始める見通し。ファイザーとアストラゼネカは厚生労働省に承認申請している。

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精選版 日本国語大辞典 「ワクチン」の意味・読み・例文・類語

ワクチン

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Vakzin )
  2. ある種の感染症に対して人工的に免疫を得させるために、その病原微生物またはその毒素液に適当な操作を加えて作った免疫原。ジフテリア、コレラ、百日咳、インフルエンザ、結核など多くの病気に用いられる。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕
  3. ワクチンプログラム」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワクチン」の意味・わかりやすい解説

ワクチン
わくちん
vaccine

感染症の予防のため人または動物に注射または経口投与することにより、生体に免疫をつくらせる免疫原をいう。すなわち、感染症の予防接種に用いられる生物学的製剤で、感染症の原因となる微生物そのものの死菌または弱毒菌株、あるいは病原微生物の産生する毒素をホルマリンで処理して無毒化し、免疫原性だけをもつトキソイドとして用いる。能動免疫(自動免疫)が得られ、生体に抗体を生じさせるのに日数を要するが、できた抗体は比較的長く生体内に保持される。これに反し、受動免疫(他動免疫)の例である免疫血清はそれ自体が抗体であり、感染症の治療にすぐ役だつが、免疫の持続は比較的短い。したがって、感染症の予防には、流行あるいは感染の危険がある場合にワクチンをまえもって投与する必要がある。しかし、緊急に発病を防ぎ、かつ長期間の免疫を与える必要のあるとき、たとえば破傷風や狂犬病の場合には免疫血清とワクチンを併用し、別々の場所に注射することもある。なお、発現する免疫抗体の持続時間には長短があり、市販のワクチンやトキソイドは生物学的製剤基準によって規制され、有効期間が法的に規定されている。

 現在、日本の予防接種法による定期接種としては、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(改良DPT三混ワクチン)、ポリオ生(なま)ワクチン、麻疹(ましん)生ワクチン、風疹生ワクチン、BCGワクチンが用いられ、予防接種法による一般的な臨時接種としては、インフルエンザHAワクチン、日本脳炎ワクチン、ワイル病秋やみ混合ワクチン、また、任意接種としてはおたふくかぜ生ワクチン、海外渡航時の予防接種としてはコレラワクチン、黄熱生ワクチン、組織培養不活化狂犬病ワクチンの接種が行われている。このほか、任意接種としてB型肝炎の感染予防のため、医師、歯科医師、看護師、検査技師など、患者および患者よりの検査材料を直接取り扱う医療従事者などハイリスク者、および母子垂直感染防止用として沈降B型肝炎ワクチンの接種が行われており、最近では水痘ワクチンが実用化され、単純ヘルペスワクチンは開発中である。なお、エイズ(AIDS)についてもワクチンの開発が急がれている。

 次に、生物学的製剤基準収載のワクチンとトキソイドを列挙する。

(1)死菌または不活化ワクチン インフルエンザワクチン、インフルエンザHAワクチン、不活化狂犬病ワクチン、乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、コレラワクチン、腸チフスパラチフス混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、乾燥日本脳炎ワクチン、沈降B型肝炎ワクチン、百日せきワクチン、沈降精製百日せきワクチン、発疹チフスワクチン、ワイル病秋やみ混合ワクチン。

(2)弱毒株を用いた生ワクチン 乾燥弱毒生おたふくかぜワクチン、痘瘡(とうそう)ワクチン(痘苗(とうびょう))、乾燥痘瘡ワクチン(乾燥痘苗)、細胞培養痘瘡ワクチン、乾燥細胞培養痘瘡ワクチン、乾燥BCGワクチン、乾燥弱毒生風疹ワクチン、経口生ポリオワクチン、乾燥弱毒生麻疹ワクチン、乾燥弱毒生水痘ワクチン。

(3)トキソイド ジフテリアトキソイド、沈降ジフテリアトキソイド、成人用沈降ジフテリアトキソイド、ジフテリア破傷風混合トキソイド、沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド、破傷風トキソイド、沈降破傷風トキソイド、沈降ハブトキソイド、百日せきジフテリア混合ワクチン、百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン。

 現在、痘瘡(天然痘)は絶滅したので種痘の必要はなくなった。また、ワイル病秋やみ混合ワクチンもほとんど必要を認めていない。以下個々のワクチンについて簡単に述べる。

[幸保文治]

改良DPT三混ワクチン

ジフテリアトキソイド、改良百日せきワクチン、破傷風トキソイドを混合したもので、従来の百日せきの死菌ワクチンの成分のうち、赤血球凝集素が主要な防御抗原であることがわかり、これを主成分とした改良ワクチンが開発され、副作用が大幅に減少している。

[幸保文治]

経口生ポリオワクチン

この投与によってポリオ患者の発生は激減した。ポリオウイルスは血清型からⅠ・Ⅱ・Ⅲ型に分けられるが、ワクチン服用者における麻痺(まひ)例はきわめて少ないが、麻痺症例から分離されたウイルスはⅢ型が圧倒的に多い。

[幸保文治]

麻疹生ワクチン

高度弱毒株が用いられ、免疫効果もよく、副作用としては軽度ではあるが高熱をみるほか、100万人に1、2人程度で麻疹脳炎、亜急性硬化全脳炎がみられる。日本では1976年(昭和51)より定期接種に採用されている。

[幸保文治]

風疹生ワクチン

日本では5種のワクチンが市販されており、副作用が少なく免疫効果は良好である。このワクチンの普及によって先天性風疹症候群は完全に予防できるようになった。ワクチンウイルスによる催奇形性についてははっきりわかっていないが、妊娠中でのワクチン接種を避け、接種後は約2か月間避妊することが望まれている。

[幸保文治]

BCGワクチン

1955年にグルタミン酸ナトリウムを分散媒とする耐熱性乾燥BCGワクチンとなった。BCGの接種は結核の発病阻止に有効であり、副作用としては接種局所の潰瘍(かいよう)、腫瘍(しゅよう)、所属リンパ節の化膿(かのう)性炎、持続性播種(はしゅ)性BCG感染などがあり、使われるBCG株によって大差がみられる。日本株は副作用が少ない。

[幸保文治]

インフルエンザワクチン

従来はインフルエンザウイルス粒子そのものをホルマリンで不活化したものが用いられたが、現在はウイルス粒子の外被の赤血球凝集素(HA)などを精製したものが使用され、発熱などの副作用が非常に少なくなった。しかし、インフルエンザの流行株とワクチンウイルスの抗原が一致したときは予防効果が高くなるが、年によって流行株が異なるため、その効果も大きく変動する。インフルエンザワクチンの問題点としては、(1)流行株の抗原が絶えず変動すること、(2)不活化ワクチンでは呼吸気道に局所免疫ができないことがあげられている。そこで、これらの欠点を改良するため、インフルエンザの弱毒生ワクチンの研究開発が進められている。

[幸保文治]

日本脳炎ワクチン

マウスの脳で増殖させた日本脳炎ウイルスを精製し、ホルマリンで不活化したものが用いられる。最初は精製度がよくなかったが、現在ではきわめて高くなり、日本では患者数が激減した。

[幸保文治]

おたふくかぜワクチン

ムンプスワクチンともいい、麻疹ワクチンおよび風疹ワクチンと混合したMMR3種混合ワクチンが開発されている。

[幸保文治]

コレラワクチン

コレラ流行地への渡航のときだけ緊急に臨時接種が行われる。予防効果は第1回注射後約1週間から出現し、約3~4か月持続して以後は消失する。

[幸保文治]

狂犬病ワクチン

従来のワクチンは脳物質を多く含み、これに対する抗体が産生されていわゆる脱髄現象をおこし、唇のしびれや手足の知覚麻痺などの運動障害、重篤な場合は死に至るといった事故の発現がみられたが、現在では脳物質の混入のおそれのない組織培養ワクチンが開発され、このワクチンが使用されているので脱髄現象の心配はない。

[幸保文治]

B型肝炎ワクチン

このワクチンは、感染予防に重要な役割を果たしているウイルス粒子を取り巻く被膜(HBs抗原)を取り出して精製し、不活化したものであり、その効果は実証されている。また、HBs抗原に相当するDNAを取り出してプラスミドに組み込ませ、細菌、酵母、種痘ウイルスなどに導入してHBs抗原を産生させる、いわゆるDNA組換え技術による大量生産が可能となり、活性HBウイルスや外来因子の混入のおそれのない安全性の高いワクチンが得られる。また、酵母を利用したB型肝炎ワクチンも検討されている。

[幸保文治]

水痘ワクチン

1970年(昭和45)水痘ウイルス岡(おか)株が分離され、これを用いてワクチンの開発が行われて1987年に市販された。水痘ワクチンは、この岡株をヒト胎児細胞、モルモット胎児細胞、ヒト二倍体細胞で継代培養し、弱毒したものが使われている。この水痘生ワクチンは、日本が世界に先駆けて開発したものである。家族内あるいは病棟内に水痘患者が発生した場合、2、3日以内にこのワクチンを接種すればほとんどの場合に発症を阻止できることが証明されている。

[幸保文治]

開発の現状

現在開発中のワクチンの製造には遺伝子工学的手段が広く用いられ、その有効性が確かめられてきている。すなわち、遺伝子工学の手段を用いて大腸菌プラスミドにDNAを組み込ませてウイルス糖タンパクをつくらせる方法、種痘ウイルスのチミジンキナーゼの部分にDNAを組み込ませて種痘ウイルスをつくり、そのままワクチンとして用いる方法などが研究されており、単純ヘルペスワクチン、B型肝炎ワクチン、成人T細胞白血病ワクチン、インフルエンザワクチンなどがその対象となっている。とくに種痘ウイルス(ワクシニアウイルス)の遺伝子中に病原ウイルスの感染予防に使える遺伝子を組み込んで、組込みワクシニアウイルス(RVV)をつくり、これを生ワクチンとして利用することが研究の課題となっている。弱毒性で病原性のきわめて弱い株を用いることが安全性につながるわけで、前述のもの以外にも、狂犬病ウイルス、水疱(すいほう)性口内炎ウイルス、エイズウイルスなどが対象とされ、また、マラリア原虫のスポロゾイト抗原遺伝子を組み込んだRVVが作製されている。

[幸保文治]

『国立予防衛生研究所学友会編『ワクチンハンドブック』(1994・丸善)』『高橋理明・神谷斉編『ワクチン最前線3――予防接種法の改正から将来のワクチンへ』(1999・医薬ジャーナル社)』『渡辺博著『わかりやすい予防接種』(2000・診断と治療社)』『牛島広治・渡辺博著『予防接種ノート』(2003・診断と治療社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ワクチン」の意味・わかりやすい解説

ワクチン
vaccine

病原性をもつ細菌,ウイルスなどを適当な方法で殺したもの,あるいは病原性をなくした生菌,生ウイルスなどで,ヒトその他の動物の感染性疾患の予防接種に用いられるものをいう。

 ジフテリア,破傷風などの細菌は毒素を分泌し,この毒素が種々の臓器に障害を与えるが,これらの毒素を精製し,ホルマリンで処置すると毒素タンパク質は変性して無毒化する。このときホルマリンの濃度,作用時間などを調節すると,毒素が毒作用を発揮する部分を主として変性させ,その他の部分の抗原性にはあまり影響を与えないようにすることができる。このように無毒化されてはいるが,動物に抗体産生の刺激を与える抗原性をもつ部分を保持している変性毒素をトキソイドと呼んでいる。ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイドがその典型的な例であり,ワクチンの一つとして実用になっている。同様の原理で細菌,ウイルスを殺すが抗原性を保たせた死菌(不活化)ワクチン,あるいは病原性を種々の方法でなくした生ワクチンが用いられている。

 日本で現在用いられているワクチンは,ジフテリア,破傷風,ハブ等のトキソイド,コレラ,ワイル病等の死菌ワクチン,百日咳の精製ワクチン,結核のBCG生ワクチン,日本脳炎,インフルエンザ等の精製ワクチン,ポリオ,麻疹,風疹,ムンプス(流行性耳下腺炎)等の生ワクチンなどである。日本では予防接種法により,ジフテリア,百日咳,ポリオ,麻疹,風疹,日本脳炎,ワイル病,コレラ,痘瘡(とうそう)(天然痘)については必要に応じて予防接種が行われることになっている。このうち痘瘡については,ワクチン作戦が最も効を奏した代表的な例で,1977年にソマリアにおいて発生した症例を最後に痘瘡は地球上から一掃されたので,日本でも予防接種が中止されている。

 予防接種施行令によりワクチン接種を定期的に受けなければならないものは,ジフテリア,百日咳,ポリオ,麻疹,風疹のワクチンなどである。このうち,ジフテリア,百日咳の両ワクチンに破傷風トキソイドを加えた三種混合ワクチンが生後2年以後2期にわたり接種され,さらにジフテリア単独またはジフテリアと破傷風の二種混合ワクチンが12歳の年度に行われている。ポリオワクチンは生後3~48月の間に6週以上の間隔をあけて2回,麻疹ワクチンは生後12~72月の間に1回,風疹ワクチンは13~15歳の間に1回接種することになっている。またBCGは結核予防法により,ツベルクリン反応が陰性の者は定期接種を受けなければならないことになっている。そのほか,痘瘡,ペスト,コレラ等のワクチンも,万一の流行に備えて備蓄されており,必要に応じて接種されることになっている。

 ワクチンは新たに注目されるようになった疾患,たとえばウイルス性肝炎などに対してもつくられている(B型肝炎ワクチンは実用化されつつある)。また,最近つくられるようになったワクチンでは,その疾病を予防するのに最もたいせつな抗原部分だけを遺伝子操作,ペプチド合成などによりつくり,安全性がきわめて高いものがつくられるようになってきた。ジフテリアトキソイドなどでは実験的にはすでに成功している。さらに研究は進められ,有効な抗原部分を支配する遺伝子を痘瘡ウイルス等に組み込ませ,痘瘡ワクチンの形で接種し,痘瘡と同時にB型肝炎などに対する免疫を獲得させることも実験的には成功している。
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百科事典マイペディア 「ワクチン」の意味・わかりやすい解説

ワクチン

生物学的製剤の一種。ある種の伝染性疾患に対する免疫をつくるために接種(予防接種)する抗原。病原微生物に一定の処理を加えて製する。生ワクチンと死ワクチンに大別。生ワクチンは弱毒化した生きた微生物で,痘苗(とうびょう),BCG,経口生ポリオワクチンなどがあり,凍結または凍結乾燥により保存される。死ワクチンは熱や薬剤などで処理した死菌,不活化リケッチア,不活化ウイルスで,インフルエンザウイルスワクチン,日本脳炎ワクチン,狂犬病ワクチン,百日咳(ひゃくにちぜき)ワクチン,コレラワクチンなどのほか,腸チフス・パラチフス混合ワクチン,百日咳ワクチンにジフテリアと破傷風のトキソイドを混合した百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン(三種混合ワクチン)もある。また,患者自身の病巣から分離した病原微生物でつくる自家ワクチンはワクチン療法に用いられる。
→関連項目ウェラーエンダーズ肝炎ワクチン自家ワクチン療法人工ワクチンDNAワクチン伝染病伝染病研究所ポリオ

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内科学 第10版 「ワクチン」の解説

ワクチン(感染症総論)

 
 ワクチン(予防接種)を国として規定する法律として,昭和23年に制定され,その後改正されてきた予防接種法がある.基本骨格は,発生および蔓延を予防することを目的として予防接種を行う疾病(一類疾病)と個人の発病またはその重症化を防止し,その蔓延の予防を目的として予防接種を行う疾病(二類疾病)に類型化されている.平成19(2007)年からは,BCGが結核予防法から予防接種法に組入れられた.
 わが国の予防接種体制はきわめてすぐれたものであったが,感染症の減少とともに後退したといわざるを得ず,麻疹・風疹ワクチンの2回接種(平成18年6月から導入),ポリオ不活化ワクチンの導入(平成24年8月現在進行中),B型肝炎ワクチンの普及(平成24年8月現在定期化は実施されていない)など,諸外国に後れを取ったものもあり,「日本はワクチン後進国」とありがたくない指摘をされる場面もある. ワクチンについては,いくつか指摘しておくべきことがある.①小児期にはウイルス感染症が多く,ワクチン対策も小児中心に行われてきた.しかし,性感染症対策など思春期に接種されることが望ましいもの,肺炎球菌ワクチンなど高齢者の感染症対策に効果を期待できるものがあり,人生の各時期に基本として推奨されるワクチンスケジュールが示されるべきである.②予防接種法は,国の公的補助が含まれているワクチン(定期接種とよばれる)について規定しており,わが国で承認されているワクチンすべてを含むものではない.任意接種対象のワクチンは多数あるが,有償のため国民の中で接種者の割合が少ないことが大きな問題である.③特に海外旅行が増えた現在,滞在先の国で感染機会の多い感染症やその国が義務として要求しているワクチンなどをあらかじめ知っておくべきである.④小児期にワクチンを受ければ,一生免疫がつくと思ってはいけない.必要に応じて自主的にブースター接種を受けたり,成人で破傷風の可能性がある外傷の場合など,ブースター接種を積極的に考慮すべきである.⑤法律に書いてある定期接種対象のワクチンだからといって,国民全員が接種を受けているというわけではない.個々の症例の診療にあたっては,詳細なワクチン既往歴の問診が重要な場合がある. 常に最新の情報を厚生労働省のホームページや広報で確認されたい.[岩本愛𠮷]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

知恵蔵 「ワクチン」の解説

ワクチン(犬・猫の)

犬と猫の予防接種用のワクチンには、1種、2種、3種、5種、8種、9種があるが、その効果は接種する週齢や回数、動物の健康状態などに左右される。従来は1年ごとに必要だったワクチンも種類により1〜3年ごとの接種でよくなり、質も向上した。正しい犬の接種プログラムは、生後6〜8週齢頃に1回目、その後3〜4週ごとに14〜16週齢まで接種し、1年目に追加接種する。その後は種類により1〜3年ごとの接種が望まれる。猫の場合は生後8週、12週で2回の接種をし、1年目以降は3年ごとに行う。猫白血病ウイルスのワクチンは、予防が必要な場合に年1回使用する。猫免疫不全ウイルスと猫伝染性腹膜炎のワクチンは、日本ではまだ使用されていない。

(石田卓夫 日本臨床獣医学フォーラム代表 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワクチン」の意味・わかりやすい解説

ワクチン
vaccine

ヒトや動物を自動的に免疫するために用いられる抗原をいう。強い病後免疫を与える感染症の多くに対して,ワクチンによる予防が実用化されている。病原体を熱や薬品で殺してつくる不活化ワクチン (百日咳,腸チフス,日本脳炎,ポリオ・ソークワクチンなど) ,発病力を弱めた生ワクチン (痘苗,BCG,ポリオ・セービンワクチンなど) ,無毒化した細菌性毒素 (ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイドなど) に大別できる。2種以上を混合した混合ワクチン,副作用の少いコンポーネントワクチンなどが開発されている。

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化学辞典 第2版 「ワクチン」の解説

ワクチン
ワクチン
vaccine

細菌,ウイルスなどの病原体あるいは細菌毒素を,その抗原としての性質を残したまま病原性または毒性を弱めるか,あるいは失わせたもの.ワクチンを用いて人為的に生体に免疫性をもたせることができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

IT用語がわかる辞典 「ワクチン」の解説

ワクチン【vaccine】

ウイルス対策ソフト。⇒ウイルス対策ソフト

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栄養・生化学辞典 「ワクチン」の解説

ワクチン

 感染症を予防する目的で病原体を弱毒化したものや,病原体と近縁の微生物を使って免疫活性を高める目的で作られるもの.接種して抗体産生を誘導する.

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「ワクチン」の解説

ワクチン

コンピューターウイルスを除去するためのソフトウェア。

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世界大百科事典(旧版)内のワクチンの言及

【免疫療法】より


[特異的免疫療法]
 これには能動免疫療法と受動免疫療法の二つがある。(1)能動免疫療法は目的とする病原体の感染に対して特異的に抵抗力をつけさせようとするもので,病原体をワクチンとして投与して免疫を獲得させるものであり,三種混合ワクチン(百日咳,破傷風,ジフテリア),ポリオ,日本脳炎,インフルエンザ,風疹,BCGなどのワクチンが代表的である。一方,目的とする抗原(アレルゲン)に対する免疫反応が人体にとって不利益な反応(アレルギー)をもたらす場合には,このような免疫反応の減弱を目標として少量のアレルゲンを徐々に増量していく治療法が行われている。…

※「ワクチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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