サービス分野の貿易自由化を進めるための国際ルールの一つ。General Agreement on Trade in Servicesの略称で、ガッツとも読む。日本では「サービスの貿易に関する一般協定」と訳されている。1994年に採択されたマラケシュ宣言の最終協定「世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定」(WTO協定、1995年1月に発効)の一部をなすもので、サービス貿易の障害となる規制を取り払うためにつくられた初の多国間協定である。
サービス分野を実務、通信、建設・エンジニアリング、流通、教育、環境、金融、健康・社会事業、観光、娯楽、運送、その他の12分野に分類。それぞれのサービス貿易を「国境を越える取引」「海外での消費」「業務上の拠点を通じたサービス提供」「人の移動によるサービス提供」の4形態にわけて定義し、加盟国がこの自由化を約束する仕組みとなっている。GATSでは、協定を結んだ相手国のサービス事業者を、自国のサービス事業者と同等に扱う「内国民待遇」を保証しなければならない。また、一律ではないものの、サービス貿易の自由化で合意した分野を積み上げていくポジティブ・リスト方式(オプトイン方式)をとっており、自由化で合意しなかった分野については自由化する必要はない。これに対し、TPP(環太平洋経済連携協定)などは、自由化しないサービス分野をあらかじめ定め、それ以外のサービス分野はすべて自由化するネガティブ・リスト方式(オプトアウト方式)を採用しており、GATSよりも自由化が進みやすいとされている。先進国の国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の割合は平均で約7割に達し、サービス貿易の自由化は世界経済の活性化のために重要であり、WTOのドーハ・ラウンドではGATSの自由化水準を引き上げる交渉に取り組んでいる。
[矢野 武]
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