日本大百科全書(ニッポニカ) 「NIE」の意味・わかりやすい解説
NIE
えぬあいいー
新聞を素材に学習を進める試み。Newspaper in Educationの頭文字をとったもの。1930年代、ニューヨーク・タイムズが、新聞を利用した学習の展開を提案したのが契機となり、子どもの読書力を高める活動として、新聞を活用する運動が全米に広まった。その後、教育に新聞を活用する試みは世界的に展開されるようになった。
日本でも、社会科などで新聞を利用した教育が試みられていたが、そうした実践を全国的に発展させる目的で、1985年(昭和60)の日本新聞協会加盟各社が集まって行われる新聞大会において、NIE(Newspaper in Education、「教育に新聞を」) が提唱され、NIE専門部会が発足した。その後、89年(平成1)、日本新聞協会と教育界とが提携して、全国組織として「NIE推進協議会」が結成された。98年には活動の中心を日本新聞教育文化財団に移した。各県に委員会が設置され、「教育に新聞を」を共通のスローガンとして、2006年には全国で459校が活動に参加、総合的な学習の時間や社会科、国語などで試みられている。
電子メディア時代を迎えた今日では、メディア・リテラシーmedia literacyの育成が急務になり始めた。メディア・リテラシーには、多様な意味が含まれるが、基本となるのは、情報を取捨選択する能力の育成であろう。同じ情報について、みんなで情報の受け止め方を話し合う、あるいは、各新聞の扱いの違いを読み比べる、あるいは、情報の伝達が時間の経過につれてどう変化するかを確かめること等が、代表的な取り組みとなる。さらに、同一の情報が新聞とテレビ、インターネットとでどう扱いが異なるのかを確かめることも有効な方法であろう。
そうした意味では、これからのNIEは、扱う対象を新聞に限定(新聞リテラシー)するのでなく、新聞を中心にテレビやインターネットなどを含めて、メディアへの総合的な判断力や発信力を育成することが重要であろう。
[深谷昌志]