サムソン(英語表記)Samson

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デジタル大辞泉 「サムソン」の意味・読み・例文・類語

サムソン(Samson)

旧約聖書中の人物。イスラエル士師で、怪力の持ち主。ペリシテ人と再三戦ってこれを破ったが、愛人デリラの策謀でその大力の根源である長髪を失い、敵に捕らえられて両眼をも失った。しかし、最後の怪力で神殿を破壊し、ペリシテ人3000人を殺し、自らも死んだという。

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精選版 日本国語大辞典 「サムソン」の意味・読み・例文・類語

サムソン

  1. ( Samson ) 旧約聖書の士師記にあらわれるイスラエルの士師で、怪力の英雄。ペリシテ人を征したが、ペリシテの女デリラを愛して欺かれ、怪力の象徴である長髪を切られる。しかし獄中で怪力が戻り、ペリシテ人の神殿を倒して三〇〇〇人を殺し自らも死ぬ。サン=サーンスのオペラや、ミルトンの「闘士サムソン」など芸術作品の主題ともなった。

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改訂新版 世界大百科事典 「サムソン」の意味・わかりやすい解説

サムソン
Samson

定着時代(前13~前11世紀)のイスラエルのダン部族出身の伝説的英雄で,民間説話的素材を多く含む〈サムソン物語〉(《士師記》13~16)の主人公。神の助けでうまずめの母マノアから生まれ,霊能の怪力を授かったので,宿敵ペリシテ人を数多く殺した。しかしこの時代のイスラエルの軍事的指導者たちとは異なり,彼の行動の動機は個人的であり,ペリシテの女を愛して失敗を重ね,ついに身を滅ぼした。彼は最初に愛した女の家での結婚の宴に集まったペリシテ人になぞ解きを課したが,女に答を洩らして苦杯をなめた。彼は,次に遊女を相手にし,最後にはデリラDelilahを愛して,ついに怪力の秘密を洩らして髪を切られ,捕らわれて目をえぐられた。しかし獄中で伸びた髪のおかげで怪力が戻ったので,ダガン神殿の柱を揺さぶり倒壊させ,祭りの群衆3000人を巻添えにしてみずから死を選んだという。その波乱の生涯は文学,美術,音楽などの主題として愛好され,ミルトンの叙事詩《闘士サムソン》(1671)やサン・サーンスのオペラ《サムソンとデリラ》(1868-77)は特に知られている。
執筆者:

初期キリスト教時代の例に,ローマ,ラティナ街道のカタコンベ壁画(4世紀)として描かれた〈ライオンを引き裂くサムソン〉〈ペリシテ人の畑を焼くサムソン〉〈ロバの骨でペリシテ人たちを殺すサムソン〉の3場面がある。これらのサムソン像はヘラクレスの図像が原形になっていると考えられる。中世初期以降は聖書写本挿絵などにサムソン伝の諸場面が描かれるようになり,上記の場面のほかに〈なぞを解くサムソン〉〈ガザの遊女のもとでペリシテ人に襲われるサムソン〉〈サムソンの髪を切るデリラ〉〈目をつぶされるサムソン〉〈さらしものにされるサムソン〉〈神殿を破壊するサムソン〉などが見られる。サムソンは《士師記》の記述に従い,肩に垂れる長い髪とたくましい身体を特徴とする。近世以降では,レンブラントやルーベンスらがサムソンを主題にした作品を残した。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サムソン」の意味・わかりやすい解説

サムソン
さむそん
šimšōn ヘブライ語
Samson 英語

『旧約聖書』の「士師記」に登場する英雄的人物で、北方の民族ダンの出身。歴史上実在した人物というより、人口に膾炙(かいしゃ)した伝説上の人物という面が強い。その生涯は、イスラエルをペリシテ人から救うために捧(ささ)げられたといわれる。「士師記」のサムソン物語(13~16章)は大略四つの部分からなる。第一は誕生の予告。サムソンはナジルとして生まれた。ナジルとはヘブライ語で聖別された人をさし、散髪飲酒、不浄な食物の摂取を禁じられた。第二はペリシテ人の女デリラとの婚礼と謎(なぞ)解き。サムソンが獅子(しし)を殺すと、それに群がるハチから蜜(みつ)がとれた。そこで客に謎をかける。「食らう者から食い物が出、強い者から甘い物が出た」。妻がせがむので、サムソンは謎を明かす。「蜜より甘いものに何があろう。獅子より強いものに何があろう」。しかし、これは答えではなく、新たな謎であった。答えは愛。妻にも客にもそれがわからなかった。第三は、サムソンがロバのあご骨でペリシテ人1000人を打ち殺した話。第四はサムソンとデリラの物語。怪力の秘密が、切ったことのない長髪にあることをデリラに漏らしたため、長髪を失ってサムソンはペリシテ人に捕らえられる。だが神に祈って力を回復し、異教の神殿を倒壊させつつ自らも死んでいく。この物語は映画や演劇の素材に取り上げられるが、サン・サーンス作曲のオペラ『サムソンとデリラ』が有名である。

[市川 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サムソン」の意味・わかりやすい解説

サムソン
Shimshon; Samson

旧約聖書の『士師記』 13~16章に登場する士師の一人。ダン族の人で,ペリシテ人を撃ったイスラエル民族の英雄。サムソンの個人的な英雄物語にはただ単にイスラエルとその敵のペリシテ人との差迫った闘争の予告が示されているだけではなく,初期のイスラエル人の諸慣習やペリシテ人の生活についてのさまざまな資料が含まれている。彼はペリシテ人の娘との計略的結婚を契機として多くのペリシテ人を殺し,のちおそらくペリシテの女であるデリラに欺かれ,奇跡的怪力の源であった髪を切られてとらわれの身となったが,やがて頭髪も伸びて力を回復した彼は多くのペリシテ人を殺し,みずからも死んだといわれる。サムソンは,多くの芸術的創作の素材ともなっている。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「サムソン」の解説

サムソン

正式社名「株式会社サムソン」。英文社名「SAMSON CO., LTD.」。機械工業。昭和20年(1945)「岡﨑鉄工所」創業。同31年(1956)株式会社化。同55年(1980)現在の社名に変更。本社は香川県観音寺市八幡町。産業機械製造会社。産業用ボイラーが主力。食品加工機・水処理機器・電子機器も手がける。全国にメンテナンス網を展開。

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世界大百科事典(旧版)内のサムソンの言及

【ヘンデル】より

…《メサイア》は慈善演奏会で演奏され,収益はすべて寄付された。ヘンデルのオラトリオは,《エジプトのイスラエル人》や《メサイア》のように聖書の言葉そのものを用いた宗教的性格の強い作品はむしろ少なく,ミルトンのテキストによる《サムソン》(1743)のようにイギリスの文学に直接関連するか,あるいは旧約聖書の物語を英語で翻案したものが大部分である。また,文学的な内容においては聖書の物語やイギリスの文学に関連しながらも,彼のオラトリオは音楽的にはイタリア・オペラのほか,アンセムやカンタータまた受難曲などを総合した劇作品であり,彼の死後にかけてイギリスの中産階級の健全な娯楽としての機能をもちつづけた。…

【髪】より

… 髪は権威や力も象徴する。旧約聖書《士師記》のサムソンは髪に怪力の秘密があることを妻デリラに打ち明け,そられて捕らえられたが髪は伸びて再び力を得,3000のペリシテ人が屋根にいる家の柱を倒してともに死んだ。メガラ王ニソスNisosは白髪の中に1本の緋(ひ)色の毛があり,これが強力な統治権を保証していたが,敵将ミノスに恋した娘スキュラSkyllaに切りとられた。…

【ナジル人】より

…ヘブライ語でナージールnāzîrとは〈聖別された人〉を意味し,誓願者はブドウ酒を断ち,髪を切らないなどの規定を守った。一時的誓願者と生涯の誓願者があり,サムソンは後者の例で,頭髪の定めがサムソン物語の重要な話として生かされている。パウロもまたある誓願を立てて,一時的にナジル人となった。…

【骨】より

… 有史以前の人類が人や動物の頭蓋骨や長骨を生活用品や武器として用いていたことは遺物からも明らかである。旧約聖書《士師記》によれば,巨人サムソンはロバの新しいあご骨をもってペリシテ人に立ち向かい,〈ろばのあご骨をもって山また山を築き,ろばのあご骨をもって1000人を殺した〉(15:16)。のち武器を捨てた地は〈あご骨の丘〉と呼ばれたという。…

※「サムソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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