翻訳|stew
肉類と野菜類を定温のとろ火で煮込んだ料理である。材料を長く煮込むことによって成分が汁に溶け、材料も汁もそれぞれの味を保つ。また、固い肉も長く煮ることによって、より柔らかくなるし、タマネギ、ニンジン、ジャガイモなど手近な野菜類でまにあうので、一般に家庭料理として親しまれている。シチューには牛肉、子牛肉、羊肉、鶏肉、豚肉などの材料の名前や地名をとって、ビーフシチュー、タン(舌)シチュー、アイリッシュシチューなどがある。ホワイトソース、ブラウンソース、トマトソース、カレーソースなどソースの変化によってもバラエティーに富んだシチューができる。
(1)ビーフシチュー(イギリス風)材料は牛肉(ばら肉など)、タマネギ(小粒)、ニンジン、ジャガイモ、トマトブラウンソース(スープストック、小麦粉、バター、トマトピューレ、塩、こしょう)。牛肉を3センチメートルの角切りにし、塩、こしょうをして小麦粉をまぶし、中火で全体に焼き色がつくまで炒(いた)める。だし汁を加えて強火で煮立て、表面に浮いてくるあくをすくい取り、沸騰直前(中央部がぷつぷつ煮立つ程度)に火を弱めて2~3時間煮る。ジャガイモは小タマネギ大に、ニンジンはジャガイモよりやや小さめに切る。同時に野菜類が煮えるように、まずニンジンを入れ、小タマネギ、ジャガイモはさっと炒めてから加える。全部一様に煮えたところで火を止める。煮汁は漉(こ)して、小麦粉、バター、トマトピューレでトマトブラウンソースをつくり、煮込んだ肉と野菜類をふたたびこのソースの鍋(なべ)に返し、さらに15分ほど煮含める。深めの皿に盛り、熱いところを供する。
(2)アイリッシュシチュー(アイルランド風)材料は羊肉、タマネギ、ニンジン、カブ、セロリ、ジャガイモ。羊肉、野菜類はすべて角切りにする。厚手の鍋に羊肉を入れ、肉からつくっただし汁を加え、塩、こしょうで調味し、野菜類を入れ、柔らかくなるまで煮る。好みによって小麦粉を入れ、とろみをつける。
[小林文子]
洋風の煮込料理。英語のstewのなまりで,フランス語のラグーragoûtに該当する。肉,魚貝,野菜などをたっぷりの煮汁で煮込むもので,大別してブラウンシチューとホワイトシチューに分けられる。ブラウンシチューは,牛肉などを油脂で表面が色づくまで焼いてから野菜などを加えていため,赤ブドウ酒,トマトピュレなどを加えただし汁で煮込むもので,ウシのばら肉を使うビーフシチューやしっぽを使うオックステールシチューが代表的なものである。ホワイトシチューは羊肉,子牛肉,鶏肉,魚貝類などの白い肉を白いソースで煮込んだもので,ジャガイモ,タマネギとともに羊肉を煮込んだアイリッシュシチューが名高い。フランスでは,ナバランnavarinという羊肉の煮込みや,ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮込み(Bœuf à la bourguignonne)がもっともよく知られるが,ほかに魚を白または赤ワインで煮込んだマトロットmatelote,ノウサギなどの狩猟鳥獣類を赤ワインで煮込み,その血を加えたシベcivetなどがある。
執筆者:辻 静雄
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…調理法,味付けは全体に単純で,肉料理ならロースト・ビーフやロースト・ラムのようなロースト料理(ロースト)が代表的である。牛のしっぽを使ったオックス・テール・シチュー,ラム肉と野菜を使ったアイリッシュ・シチュー(シチュー)のような煮込み料理や,子牛やラムの腎臓を加えた詰物をして焼くキドニー・パイkidney pieなど,家庭料理に美味なものが多い。島国ならではの新鮮な魚介類を使ったものでは,北海のサケで作ったスモークサーモンsmoked salmonは定評があり,街角で見られるフィッシュ・アンド・チップスという魚のフライとジャガイモの空揚げは,アメリカのハンバーガーのような手軽で庶民的な食べ物である。…
※「シチュー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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