吉原幸子(読み)よしはらさちこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉原幸子」の意味・わかりやすい解説

吉原幸子
よしはらさちこ
(1932―2002)

詩人。東京生まれ。東京大学仏文科卒業。中学時代から演劇に興味をもち、劇団四季に属したことがある。一子を産んだのち離婚、過去を「清算」するつもりで、『幼年連祷(れんとう)』『夏の墓』(ともに1964)を刊行。愛の痛みを知的に歌い上げ、前者室生犀星(むろうさいせい)賞を受賞した。『オンディーヌ』(1972)、『昼顔』(1973)を経て、『夢あるいは……』(1976)、『夜間飛行』(1978)に至り、死、夢を凝視して、生の本質に迫る作品世界を創造。1974年(昭和49)、『オンディーヌ』『昼顔』で、高見順賞受賞。1978年アイオワ大学に招かれ渡米、4か月滞在する。1983年、新川和江(1929― )とともに季刊詩誌『ラ・メール』の編集を担当する(1993年、通巻40号で終刊)。この間、著作活動も意欲的に進める。1981年『吉原幸子全詩』全2巻をまとめる。さらに、詩集『花のもとにて春』『恋唄(こいうた)』(ともに1983)、『ブラックバードを見た日』『樹たち・猫たち・こどもたち』(ともに1986)、『発光』(1995。萩原朔太郎(さくたろう)賞受賞)などを刊行。エッセイ集・詩論集などに『人形嫌い』(1976)、『花を食べる』(1977)、『ちどりあ詩』(1982)、対談集『女を生きる女たち』(1985)、『今をはばたく女たち』(1988)など、また童話集『クモンの空』(1977)、『鳥の伝説』(1989)のほか訳詩集など翻訳書もある。

[首藤基澄]

『『オンディーヌ 詩集』(1972・思潮社)』『『昼顔 吉原幸子詩集』(1973・サンリオ出版)』『『吉原幸子詩集』(1973・思潮社)』『『魚たち・犬たち・少女たち 吉原幸子詩集』(1975・サンリオ出版)』『『夢あるいは…… 吉原幸子詩集』(1976・青土社)』『『人形嫌い』(1976・思潮社)』『『花を食べる』(1977・思潮社)』『『クモンの空』(1977・エルム新社)』『『新選吉原幸子詩集』(1978・思潮社)』『『夜間飛行 吉原幸子詩集』(1978・思潮社)』『『吉原幸子全詩』全2巻(1981・思潮社)』『『ちどりあ詩』(1982・思潮社)』『『恋唄 吉原幸子詩集』(1983・沖積舎)』『『吉原幸子対談集 女を生きる女たち』『吉原幸子対談集 今をはばたく女たち』(1985、1988・思潮社)』『『女たちの恋歌――現代詩で甦る三十一文字熱き思い』(1986・PHP研究所)』『『ブラックバードを見た日』『樹たち・猫たち・こどもたち』(1986・思潮社)』『『マンガ百人一首』(1986・平凡社)』『『新編花のもとにて春 詩集』(1988・思潮社)』『『鳥の伝説』(1989・すばる書房)』『『発光』(1995・思潮社)』『谷川俊太郎・大岡信編『現代の詩人第12 吉原幸子』(1983・中央公論社)』『魔女倶楽部編著『地球(ほし)に降りた花神(ミューズ)たち』(1990・徳間書店)』『大庭みな子著『大庭みな子対談集 やわらかいフェミニズムへ』(1992・青土社)』『藤本英二著『現代詩の授業』(1993・三省堂)』『萩原朔太郎記念水と緑と詩のまち前橋文学館編・刊『「幼年連祷」から「発光」まで』(1996)』

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20世紀日本人名事典 「吉原幸子」の解説

吉原 幸子
ヨシハラ サチコ

昭和・平成期の詩人 元・「現代詩ラ・メール」編集発行人。



生年
昭和7(1932)年6月28日

没年
平成14(2002)年11月28日

出生地
東京都新宿区

学歴〔年〕
東京大学文学部仏文科〔昭和31年〕卒

主な受賞名〔年〕
室生犀星賞(第4回)〔昭和39年〕「幼年連禱」,高見順賞(第4回)〔昭和49年〕「オンディーヌ」「昼顔」,萩原朔太郎賞(第3回)〔平成7年〕「発光」

経歴
昭和31年劇団四季に入団し、アヌイ「ユーリディス」などに出演。32年退団。39年第一詩集「幼年連禱」で室生犀星賞を受賞。49年詩集「オンディーヌ」と「昼顔」で高見順賞を受賞。恋愛や裏切りを主題に肉感性豊かな言葉で表現した作品を数多く発表した。53年米国アイオワ大学International Writing Program(4ケ月間)に招かれて参加。58年より詩人の新川和江と共に季刊詩誌「現代詩ラ・メール」を創刊、編集・発行者を務め、女性詩人の作品発表や紹介に力を入れた。平成5年4月40号で終刊。「歴程同人。エッセイ・童話翻訳などにも携わった他、モダンダンスの演出、作曲家や歌手と組んでリサイタルを開くなど、詩作以外にも多彩な活動を見せた。他の著書に詩集「発光」、エッセイ「花を食べる」「人形嫌い」などの他、「吉原幸子全詩」(全2巻)がある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「吉原幸子」の解説

吉原幸子 よしはら-さちこ

1932-2002 昭和後期-平成時代の詩人。
昭和7年6月28日生まれ。昭和31年東大卒業後劇団四季にはいり,アヌイ「ユーリディス」の主役を演じたが,翌年退団。39年少女期への郷愁がベースの懐古的叙情を今日の言葉でうたいあげる第1詩集「幼年連祷」で室生犀星賞,48年「オンディーヌ」「昼顔」の2詩集で高見順賞,平成7年「発光」で萩原朔太郎賞をうける。その間の昭和58年新川和江と季刊詩誌「現代詩ラ・メール」を創刊した。平成14年11月28日死去。70歳。東京出身。

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百科事典マイペディア 「吉原幸子」の意味・わかりやすい解説

吉原幸子【よしはらさちこ】

詩人。東京生れ。東大仏文科卒。第1詩集《幼年連祷(れんとう)》(1974年)で室生犀星賞を受賞。詩集《オンディーヌ》と《昼顔》で高見順賞受賞。《歴程》同人。新川和江と女性詩誌《現代詩ラ・メール》を創刊,編集をつとめた。エッセー,童話,舞台の脚本を手がけるなど多方面で活躍。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

367日誕生日大事典 「吉原幸子」の解説

吉原 幸子 (よしはら さちこ)

生年月日:1932年6月28日
昭和時代;平成時代の詩人
2002年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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