朝日日本歴史人物事典 「徳道」の解説
徳道
8世紀前後に生存した伝説的な僧侶,奈良長谷寺の開祖。出身は播磨国(兵庫県)揖保郡で俗姓は辛矢田部米麻呂といい,有力豪族であったらしい。出家,受戒して沙弥になるが,師は弘福寺(川原寺)の道明とも東大寺良弁とも伝えられる。『長谷寺縁起文』には徳道が聖武天皇の勅を受け,道明の指導のもとに精舎建立を発願し長谷寺を建立するに至る経緯が述べられている。近江国(滋賀県)高嶋郡白蓮華谷にあった霊木をもって稽主勲,稽文会のふたりの巧匠に命じて2丈6尺の十一面観音を造らせ,天平5(733)年に行基を導師として開眼供養を行ったとされる。行基の関与は疑わしいところもあり,長谷寺建立の時期は720年代と考えられている。なお,長谷寺縁起関係ではすべて「徳道」とされるが,『東大寺要録』第6末寺章長谷寺の項では「道徳」と表記されている。<参考文献>赤尾竜治編『徳道上人』,逵日出典『長谷寺史の研究』
(追塩千尋)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報