敵に塩を送る(読み)テキニシオヲオクル

故事成語を知る辞典 「敵に塩を送る」の解説

敵に塩を送る

敵の弱みにつけこまないで、逆にその苦境から救うことのたとえ。

[使用例] 昔むかし上杉謙信は、多年の敵たる武田信玄に塩を送った、という話がある[堺利彦*泥棒|1922]

[使用例] 必ずこれを役立ててみせる。送られた塩を無駄にしたのでは恥ずかしい[真保裕一*ローカル線で行こう!|2013]

[由来] 日本の戦国時代のこと。甲か斐い(現在の山梨県)を中心に勢力を築いていた武将、武田信玄は、領地が海に面していませんでした。そこで、東海地方から塩を手に入れていましたが、東海地方を領地とする今川氏うじ真ざねは、関東地方の北条氏うじ康やすと相談して、武田領への塩の販売を禁止してしまいます。信玄が困っていたところ、ライバルだった越後(現在の新潟県)の上杉謙信から、手紙が届きました。謙信が言うには、「争う所は弓きゅう箭せんに在りて、米べい塩えんに在らず(我々の争いは、武力の争いであって、生活必需品の争いではない)」。商人たちに命令して、公正な価格で武田領に塩を販売させたということです。以上は、「日本外史―足利後記・武田氏上杉氏」に載せられて、有名なエピソードです。

[解説] ❶武田信玄と上杉謙信は、「川中島の戦い」で何度も矛先を交えた、宿敵同士。だからこその美談なのですが、これを史実だとすることには、異論もあります。とはいえ、お話としては、手段を選ばない今川氏真・北条氏康に対して、公正な価格で塩を売らせた謙信の正義感が、引き立つ構成になっています。❷現在では、「敵に塩を送るようなことになってしまわないか」というような形で、「苦しんでいる相手を救うようなことをしない方がいい」という意味合いで、よく使われます。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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