秋に大学に入学する制度。欧米の大学では8割以上が秋入学であり、日本でも一部の大学・学部が導入している。2011年(平成23)、東京大学が大学の入学時期をこれまでの4月から9月に移行する改革案を公表した。その後、2012年3月の報告書で5年後をめどに秋入学に全面移行する基本方針を示し、大学全体にわたる検討組織を設立して制度設計を開始するとともに、京都大学、早稲田大学、慶応義塾大学などの他大学とも連携し、協議を進めた。しかし翌2013年6月、「社会的環境整備の見通しが明らかでない」として、2017年度の全面移行を見送り、その代案として留学や研究員の受け入れなどがスムーズになる4学期制の導入を決めた。一方で、政府や経済界は成長戦略の一環として秋入学を後押ししており、今後も秋入学の実現に必要な社会的環境の整備に取り組んでいく方針を示している。なお、大学の始期と終期の規則に関しては2008年に学校教育法施行規則が改正され、学長判断で決定できるようになっている。
秋入学は、国際標準といえる秋期に入学時期をあわせることで、留学希望者や研究者の受け入れが円滑になり、海外校との交流を促進することでグローバル化に対応した人材育成につながるとして提案された。欧米の大学を規範にして設立された日本の大学は、明治時代から1921年(大正10)ごろまでの間は秋入学を実施していたが、国の会計年度制に足並みをあわせるために、春入学に変更したという経緯がある。その後、秋入学はたびたび検討されてきたが、制度の変更に伴う課題が多く、多くの大学では実現することが難しかった。導入に向けては、3月の試験合格から9月の入学までの空白期間(ギャップイヤー)の問題、私企業の就職活動や採用時期、奨学金制度のあり方、各種国家試験の実施時期など、さまざまな観点から社会制度の見直しが必要になるため、秋入学に対しては慎重な意見も少なくない。
[編集部]
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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