珪酸塩(読み)ケイサンエン

デジタル大辞泉 「珪酸塩」の意味・読み・例文・類語

けいさん‐えん【×珪酸塩】

二酸化珪素と金属酸化物からなる塩。アルカリ塩以外は水に溶けず、一般に融点が高く、融解して冷却するとガラス状になることが多い。

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精選版 日本国語大辞典 「珪酸塩」の意味・読み・例文・類語

けいさん‐えん【珪酸塩・硅酸塩】

  1. 〘 名詞 〙 二酸化珪素と金属酸化物との塩。地殻主成分で、地球上最も多量に存在する。一個の珪素が四個の酸素で囲まれた正四面体原子団基本に、多種多様に結合して鉱物岩石を形成している。一般に融点が高く、融解したものが冷却すると、ガラス状になりやすい。窯業、ガラス工業などの工業原料として重要。〔稿本化学語彙(1900)〕

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化学辞典 第2版 「珪酸塩」の解説

ケイ酸塩
ケイサンエン
silicate

nM2O・mSiO2,またはM2Oを,MO,M2O3などで置き換えた物質.Siは4個のOで四面体型に囲まれている.その四面体が,独立して存在するもののほかに,ほかのSiO4と頂点のOを共有して結合しているものがある(稜または面を共有して多重結合をすることはない).その結果,鎖状のオリゴマー,環状縮合体,無限鎖ポリマー,無限二次元ポリマー,三次元ポリマーなどが知られている.【モノマーの [SiO4]4- をもつもの(図(a)).オルトケイ酸塩.ネソケイ酸塩ともいう.Siは4個のOに正四面体型に囲まれている.一方,金属陽イオンもOで囲まれ,M-Oはやや長いが,フェナサイト(phenacite)Be2SiO4では4個のOが正四面体型に,ケイ酸亜鉛鉱(willemite)Zn2SiO4では6個のOが正八面体型に,ジルコンZrSiO4では8個のOが十二面体型に配列している.MとSiO4間は完全なイオン結合ではなく,ある程度共有結合性がまじっていると考えられる.【】鎖状のオリゴマー.ソロケイ酸塩ともいう.[Si2O7]6- を含む二ケイ酸塩(図(b))が代表的なものである.異極鉱(hemimorphite)Zn4(Si2O7)(OH)2・H2O,トルトベート石(thortveitite)Sc2(Si2O7)などがある.【】環状縮合体.シクロケイ酸塩ともいう.三,四,六,八,九員環が知られている.ベニト石(benitoite)BaTiSi3O9は [Si3O9]6-(図(c))をもつ.また,緑柱石(beryl)Al2Be3Si6O18は [Si6O18]12-(図(d))をもつ.このほかに,海王石(neptunite)は [Si4O12]8- を,ムイライト(muirite)は [Si8O24]16- を,ユージアル石(eudyalite)は [Si9O27]18- をもつ.【】無限鎖ポリマー.イノケイ酸塩ともいう.おもなものは,単純鎖型の輝石類(pyroxene)のメタケイ酸塩 (M2SiO3)n(図(e))と,角せん石類(amphibole)(M6Si4O11)n(図(f))である.これ以外の形式の鎖,たとえば,ゾノライト(xonotlite)Ca6Si6O17(OH)2の [Si6O17]10- などいくつか知られている.また,アルミノケイ酸塩のけい線石Al[AlSiO5]は [AlSiO5]2- の鎖状構造をもつ.これらの固体では鎖は平行に存在し,そのすきまに陽イオンが配列しており,鎖方向に繊維状に割れやすいものが多い.【】無限二次元ポリマー.フェロケイ酸塩ともいう.SiO4四面体の3個のOが各隣接するSiO4と共有されて,板状の二次元ポリマー型になったもの.これらは [(Si2O5)2-]n をもつ(図(g)).この平面は普通平行に並び,対陽イオンはそれらの平面間に位置する.そのため,平面に平行な方向に割れやすいへき開性がみられる.葉長石(petalite)LiAl(Si4O10),魚眼石(apophyllite)KCa4F(Si4O10)2・8(H2O).滑石(talc)Mg3(Si4O10)(OH)2や,アルミノケイ酸塩の雲母がある.【】三次元ポリマー.テクトケイ酸塩ともいう.SiO4四面体の4個すべてのOを隣接するSiO4と共有した三次元ポリマーSiO2は,二酸化ケイ素であり塩ではない.しかし,この骨格をもち,そのSiO4のOのいくつかをAlで置換したアルミノケイ酸塩では,Si→ Alのため骨格は負の荷電をもち,陽イオンとともに塩をつくる.たとえば,長石類の正長石(orthoclase)はK[(AlO2)(SiO2)3],灰長石(anorthite)はCa[(AlO2)2(SiO2)2]である.このグループには,ほかにゼオライト(沸石)類がある.かご形の大きな分子空洞を包んだ形で,なかに水や大きいイオンなどを入れることができて,陽イオン交換も行う.天然に,方沸石(analcite)Na[(AlO2)(SiO2)2],曹沸石(natrolite)Na2[(AlO2)2(SiO2)2]などがあるほか,用途に応じた性質をもつものが人工的に種々合成されている.また,群青(Na4[(AlO2)3(SiO2)3]S1~2)もこのグループの一員である.ケイ酸塩はアルカリケイ酸塩を除き水に不溶.酸に難溶であるが,フッ化水素と硫酸の混合物には易溶.陶磁器,セメント,耐火レンガ,ガラスなど窯業上重要な製品に種々のケイ酸塩がそれらの特性に応じて用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「珪酸塩」の意味・わかりやすい解説

ケイ(珪)酸塩【けいさんえん】

ケイ酸の塩で,一般には二酸化ケイ素SiO2と金属酸化物とからなる塩(図)などをいう。天然に広く,かつ多量に存在し,地殻の主成分。アルミニウム,鉄,カルシウム,カリウム,ナトリウムなどの塩が多い。一般に融点が高く(多くは1000℃以上),融解してから冷却するとガラスをつくりやすい。アルカリ金属塩を除いて水に難溶。フッ化水素酸以外の酸,その他の試薬に侵されにくい。耐火物,ガラス,セメント,陶磁器,ゼオライト触媒などの製造に使用。→ケイ酸塩鉱物ケイ素酸素四面体
→関連項目セラミックス

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世界大百科事典(旧版)内の珪酸塩の言及

【巨大分子】より

…分子の定義を拡張して,ナトリウムイオンと塩化物イオンが多数イオン結合で結ばれた塩化ナトリウム(食塩)結晶や,分子が水素結合によってでき上がっている氷も巨大分子と呼んでいる。さらにケイ酸イオンの(SiO4)4-,(Si2O7)6-などが無数結合してできた巨大イオンから成るケイ酸塩も巨大分子に含める場合がある。【井口 洋夫】。…

【ケイ酸(珪酸)】より

…コロイド状不定組成のケイ酸はシリカゲルと呼ばれ,水ガラス(主としてケイ酸ナトリウムを含む濃厚水溶液)に塩酸を加えて,透析して製造される。
[ケイ酸塩]
 二酸化ケイ素と金属酸化物とからなる塩。化学式xMI2O・ySiO2。…

※「珪酸塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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