二酸化珪素(読み)ニサンカケイソ

デジタル大辞泉 「二酸化珪素」の意味・読み・例文・類語

にさんか‐けいそ〔ニサンクワ‐〕【二酸化×珪素】

珪素酸化物。天然には水晶石英瑪瑙めのうオパールなどとして産出。純粋なものは無色の結晶。弗化ふっか水素・融解アルカリ以外に対しては安定。ガラス・水晶発振器・研磨剤などに利用。化学式SiO2 シリカ無水珪酸

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精選版 日本国語大辞典 「二酸化珪素」の意味・読み・例文・類語

にさんか‐けいそニサンクヮ‥【二酸化珪素】

  1. 〘 名詞 〙 珪素の酸化物。化学式 SiO2 石英・鱗珪石・クリストバル石の三つの変態およびコロイド状・ガラス状のものなどがある。天然には、水晶、珪砂、瑪瑙、玉髄、オパール、珪藻土などとして広く存在し、珪酸塩工業の原料や宝石として用いられる。シリカ。

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化学辞典 第2版 「二酸化珪素」の解説

二酸化ケイ素
ニサンカケイソ
silicon dioxide

SiO2(60.09).シリカ,無水ケイ酸ともいう.岩石中に石英として多量に産出する無色の化合物.そのほか,めのうオパール(たんぱく石),玉髄,水晶として産出する.石英がとくに純粋な形で集合したものは石英砂またはけい砂とよばれ,光学ガラス光ファイバー,水晶発振器などに用いられ,ケイ酸塩工業上,重要な資源となっている.構造は無定形のものから,高圧下で安定なものまで,種々の多形が存在し,スチショバイトを除いてSi-O四面体構造単位のすべての角が共有された三次元網目構造である.【】無定形二酸化ケイ素:可溶性ケイ酸塩水溶液に酸を加え,生じた沈殿を乾燥させると得られる.空気中の水分などを吸着する能力がある([別用語参照]シリカゲル).二酸化ケイ素の多形中,もっとも化学的に活発である.温泉から沈殿したものは水を含み,ケイ華とよばれる.天然にオパール,ルシャトリエライトとしても産出する.シリカゲル,クロマトグラフィー用吸着剤として利用される.ガラス,陶磁器セラミックス,研磨剤,コンクリートの製造などに用いられる.[CAS 60676-86-0:SiO2(vitreous)]【】石英:無色の結晶.低温形(α石英:三方晶系)と高温形(β石英:六方晶系,いわゆる水晶)とがある.転移温度573 ℃.密度2.635~2.660 g cm-3.融点1610 ℃,沸点2230 ℃.水に不溶,フッ化水素酸以外の酸に不溶.Na2CO3やK2CO3の融解物と反応してケイ酸塩となり,水に溶ける.[CAS 7631-86-9:SiO2][CAS 14808-60-7:SiO2(α quartz)][CAS 14808-60-7:SiO2(β quartz)]【トリジマイト(りんけい石):斜方晶系.密度2.26 g cm-3.融点1703 ℃,沸点2230 ℃.化学的性質は石英にほとんど同じ.α,β形の2種類の多形がある.[CAS 15468-32-3:SiO2(tridymite)]【クリストバライト:立方または正方晶系に属する.密度2.32 g cm-3.融点1713±5 ℃,沸点2230 ℃.α,β形がある.[CAS 14464-46-1:SiO2(crystobalite)]【コーサイト,スチショバイト:ともに高圧下で安定で,前者は0 ℃ で2×104 atm,後者は 105 atm 以上で安定である.また,後者はルチル型構造をもつ.いずれも合成により得られるが,天然ではいん石孔の周辺に見いだされた.

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改訂新版 世界大百科事典 「二酸化珪素」の意味・わかりやすい解説

二酸化ケイ(珪)素 (にさんかけいそ)
silicon dioxide

化学式SiO2。シリカ,無水ケイ酸などとも呼ばれる。いろいろな結晶状態として天然に産する。また合成により結晶および無定形,ガラス状などの二酸化ケイ素が得られる。結晶状態には石英,リンケイ石,クリストバライトの三つの変態がある。石英(水晶,メノウ,玉髄,フリントなどを含む)は無色または不純物により紫,褐色その他に着色している。石英には,573℃以下で安定な低温型のα石英と,573℃以上で安定な高温型のβ石英の二つの変態がある。α石英は三方晶系,β石英は六方晶系で,モース硬度は7.0,密度は2.635~2.660g/cm3。結晶は対称軸を欠くため旋光性を示し右旋性(右水晶)と左旋性(左水晶)とがある。融点1550℃,沸点2950℃。水に不溶,フッ素と直接化合する。フッ化水素酸以外の酸に不溶。炭酸ナトリウムなどの融解物と反応してケイ酸となり,水に可溶となる。リンケイ石(トリジマイト)には117℃以下で安定なα型(斜方晶系),117~163℃で安定なβ1型(斜方晶系),163℃以上で安定なβ2型(六方晶系)の3種があり,密度は2.26g/cm3。融点1703℃,沸点は石英および他の結晶と同じく2950℃と測定されている。クリストバライトにもα型(正方晶系)とβ型(立方晶系)がある。融点は1713℃。ほかに高圧下で安定なコーサイト,スティショバイトなどがある。高温・高圧反応で人工的につくられたものであるが,隕石孔の周辺に発見されることがある。いずれも四面体SiO4単位構造が三次元的に配列した構造を有する。これらの結晶は互いに転移し,最も低温ではα石英が安定で,ついでβ石英(転移温度575℃),βリンケイ石(870℃),βクリストバライト(1470℃)となる。また天然にはSiO2nH2Oの組成をもつ無定形の二酸化ケイ素がある。オパールはその一つで,密度は2.1~2.3g/cm3,融点は1600℃以上である。

 実験室で可溶性のケイ酸塩水溶液に適当な酸を加えたコロイド状ケイ酸を蒸発乾固させると,しばしばシリカゲルと呼ばれる多孔質の無定形二酸化ケイ素が得られる。これを融剤とともに適当な温度,圧力で融解し,適当な熱力学的条件に保てば,条件に応じて,石英,リンケイ石,クリストバライトの任意の結晶が得られる。無定形二酸化ケイ素は空気中の水分を吸収する能力があるので,乾燥剤に利用される。結晶を2000℃近くの高温で融解して得られる石英ガラスは紫外線を通しやすく,膨張率が小さい。このため,急激に強熱あるいは冷却しても割れにくく,高温用ガラスとして用いられる。水晶やオパールは装飾用に用いられる。水晶は発振器に広く利用されている。そのほか,単体ケイ素の製造原料,建築材料,切削・研磨材,クロマトグラフ用吸着剤などに用いられる。
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百科事典マイペディア 「二酸化珪素」の意味・わかりやすい解説

二酸化ケイ(珪)素【にさんかけいそ】

化学式はSiO2。無水ケイ酸,シリカとも。純粋なものは無色透明の固体。天然には各種ケイ酸塩鉱物として産出。一般に水および酸には溶けないが濃アルカリ溶液には徐々に溶け,フッ化水素酸には侵される。ガラスやガラス繊維,陶磁器,セメント,各種ケイ酸塩の製造原料として重要。単結晶のものはクォーツ時計の発振器や光学用などの精密機器に使われ,石英ガラスとして光ファイバーを含む各種光学材料や化学実験器具などに使われる。
→関連項目シリカセメントシリコーンゴム石英ガラス接触分解耐火粘土耐火物

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世界大百科事典(旧版)内の二酸化珪素の言及

【シリカゲル】より

…水ガラス(ケイ酸ナトリウム)の水溶液に酸を加えることにより生成する含水ケイ酸ゲル(ヒドロゲル)を洗浄し,加熱脱水して得られる白色の固体で,二酸化ケイ素(シリカ)SiO2nH2Oからなる。数nmの孔が無数に開いており,このため内部表面積は500~700m2/gに達する。…

※「二酸化珪素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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