タイーロフ(英語表記)Tairov, Aleksandr Yakovlevich

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイーロフ」の意味・わかりやすい解説

タイーロフ
Tairov, Aleksandr Yakovlevich

[生]1885.6.24. ロブノ
[没]1950.9.25. モスクワ
ソ連の演出家。モスクワ芸術座と K.スタニスラフスキーのリアリズムにあきたらず,1914年女優である妻 A.コーネンとともにカーメルヌイ劇場を設立。音楽,踊り,パントマイム,アクロバットなどを取入れて,観客情感に訴える新しい演出を試みた。すなわち,伝統的な装飾的舞台装置を排し,俳優の身体性を重視するとともに,照明や音楽の効果を生かした,全体演劇の創造を目指した。その理論はシアトリカリズムとして知られるが,形式主義との批判もあった。代表的演出は,V.ビシネフスキーの『楽天的悲劇』 (1933) ,『ボバリー夫人』 (40) など。主著は『芸術家の宣言』 Proklamatsii Khudozhnika (17) ,『演出家の覚え書』 Zapiski Rezhissëra (21) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイーロフ」の意味・わかりやすい解説

タイーロフ
たいーろふ
Александр Яковлевич Таиров/Aleksandr Yakovlevich Tairov
(1885―1950)

ロシアの演出家。1905年からキエフ(現、キーウ)、サンクト・ペテルブルグリガなどの舞台に立つ。やがてガイデブーロフの移動劇団に加わり、『ハムレット』『ワーニャ伯父さん』などを演出、1914年にモスクワにカーメルヌイ劇場を創設した。「総合演劇」を目ざして、写実的演技を排し、歌、バレエサーカスの要素を取り入れ、構成主義舞台を用いて形式美と情緒の調和をねらった異色の舞台を創造した。『フェードル』『三文オペラ』『楽天的悲劇』『ボバリー夫人』などの演出がある。スターリン時代に形式主義の烙印(らくいん)を押され不遇のうちに没した。

[中本信幸]

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改訂新版 世界大百科事典 「タイーロフ」の意味・わかりやすい解説

タイーロフ
Aleksandr Yakovlevich Tairov
生没年:1885-1950

ソ連邦の演出家。俳優出身。1914年に妻で女優のコーネンAlisa G.Koonen(1889-1974)らとともにモスクワ・カーメルヌイ劇場を創立。自然主義演劇と額縁舞台を拒み,音楽,美術,舞踊を駆使する総合芸術を目指して神秘劇からオペレッタまで広く上演した。代表作に《フェードル》(1922),《三文オペラ》(1930。ソ連でのブレヒト初演),《楽天的悲劇》(1933),《かもめ》(1944)その他がある。
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