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アクロバットの語は,ギリシア語のakrobatos(爪先で歩く者)に由来する。古代ギリシア・ローマから,中世を経て現代まで,祭りなどに大道芸として職業化したが,18世紀半ばからサーカスの演目に採り入れられ,19世紀末からはミュージック・ホールの出し物としても欠かせないものとなった。内容は大別して三つに分類することができる。第1は主として力業(ちからわざ)が基になるもので,重量挙げをはじめ,エジプト渡来といわれる〈人間ピラミッド〉など並はずれた腕力を必要とするものである。第2は体の柔軟さを基本とするもので,跳躍,とんぼ返り,空中ブランコなど身軽さを売物とするもの。第3は平衡を保つ芸で,綱渡り,はしご乗り,自転車曲乗りなどである。以上のほかに,ダンスのなかにこれらの芸をはさんだアクロバット・ダンスが別個に発達しているが,いずれも特殊な技術としてそれぞれ伝承・養成されている。演劇においては,コメディア・デラルテの伝統演技を採り入れたイタリアのピッコロ・テアトロのストレーレル演出や,芝居の前に必ず曲芸を見せるサバリの〈グランド・マジック・サーカス〉などが有名。
→曲芸
執筆者:利光 哲夫
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軽業(かるわざ)のこと。語源はギリシア語の「つまさきで歩く」からきたといわれる。体の柔らかさとスピードが要求され、バレエのトゥール・アン・レール(跳躍しながらの回転)、エジプトの奴隷の舞踊から生まれたといわれるブリッジ、コメディア・デラルテにみられる盆にコップをのせたままのでんぐり返しなどが代表的なものである。日本では高足駄を履いて綱渡りをする蜘蛛舞(くもまい)、空中を跳躍する蓮飛(れんとび)、肩の上に人を乗せて疾駆する人馬(ひとうま)、空中回転の「とんぼ」などの雑芸(ぞうげい)として発達した。歌舞伎(かぶき)の宙乗りは綱に滑車をつけ俳優の背中から吊(つ)るすが、アクロバット的な要素が強い。同種の宙吊りは19世紀のロマンチック・バレエで妖精(ようせい)の登退場に用いられた。「天狗(てんぐ)の飛行」「蛙(かえる)の一足(いっそく)」などと動物の名がついていることが多いが、人間の体のもつ法則から逸脱して、超人的演技によって、超人と化すことを目的としているからであろう。現代では各国のサーカスのなかにこれらアクロバットの芸が集約されている。
[市川 雅]
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…【織田 紘二】
[外国の曲芸]
ヨーロッパにおいても,曲芸は古くからおこなわれていた。曲芸,軽業を意味するアクロバットacrobatはギリシア語のアクロスakros(先端)とバトスbatos(行く)からきた言葉で,つまさきで歩くことを意味し,初めは〈綱渡り〉のことをいっていた。ギリシアには綱渡りを教える学校が設けられ,ホメロスの詩も曲芸師に言及している。…
…【織田 紘二】
[外国の曲芸]
ヨーロッパにおいても,曲芸は古くからおこなわれていた。曲芸,軽業を意味するアクロバットacrobatはギリシア語のアクロスakros(先端)とバトスbatos(行く)からきた言葉で,つまさきで歩くことを意味し,初めは〈綱渡り〉のことをいっていた。ギリシアには綱渡りを教える学校が設けられ,ホメロスの詩も曲芸師に言及している。…
…彼らは金銭の取得を目的としたために,宗教上・商業上の行事や人集め,また宴の余興に雇われることも多かった。しかし彼らが行う技芸そのものは神事や儀礼といった宗教的起源を有し,アクロバット(もとになったギリシア語akrobatosは〈爪先立って歩く〉の意)にしてもクレタ島では神聖な儀式として演じられていた。したがってこれらの技芸は特定の集団や地域に継承される例が多く,たとえば馬を踊らせたり曲乗りをしたりする技術は古代ギリシアのシュバリスで高い水準に達した。…
※「アクロバット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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