精選版 日本国語大辞典 「トムセン」の意味・読み・例文・類語
トムセン
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デンマークの考古学者。船持ちの富裕な商人の長男として生まれ,家業のかたわら古銭学に造詣を深め,1816年古代文物保存協会の無給書記となり,42年同協会会長,49年には古代北欧博物館(デンマーク国立博物館の前身)館長となって,65年までその職にあった。美術部門を充実し,またP.F.vonシーボルトの助言をうけ,世界で初めて民族部門を創設するなど,博物館マンとしての功績は大きい。考古学者としては,石器時代・青銅器時代・鉄器時代の三時代区分法Dreiperiodensystemの提唱者として名高い。1818年ころからこの区分に従って遺物を展示していたが,この考案は36年,王立北欧古代学協会が発刊した小冊子《北欧古代学入門》で初めて公にされた。翌年にはドイツ語版も刊行され,ヨーロッパの学界に賛否両論,あるいはその先唱者をめぐる論争を招いた。なおこの書物の内容はきわめて啓蒙的で,文化財保護の必要性を強く訴え,遺跡・遺物を見いだした際の処置,北欧のおもな博物館を列挙して結んでいる。またトムセンは,しばしば博物館の展示室で一般見学者に話しかけ,説明をかってでるなど,博物館の社会教育的役割を自ら実践した。
執筆者:佐原 眞
デンマークの言語学者,言語史家。コペンハーゲン大学教授。青年文法学派に属し,インド・ヨーロッパ(印欧)語はじめ多くの言語についての200以上の労作がある。印欧語については,ロマンス語の音韻史,ゲルマン語とバルト語との関係,ゲルマン語およびバルト語とフィン語との関係についての論文がある。1893年,シベリアのオルホン川,エニセイ川両河岸で発見された碑文を解読し,最古(8世紀)のチュルク語(チュルク諸語)資料を提供した業績は世界言語学史上に輝くもので,日本の東洋史家の間に古くから知られている(1894年刊《オルホンおよびエニセイの碑文の解読》,1896年刊《解読されたオルホン碑文》)。のち,ヒンディー語,サンターリー語を研究した。デンマーク語方言辞典およびスウェーデン語辞典の編集にも参画した。大学の講義をまとめて出版した《19世紀末までの言語学史》(第2版,1902)は日本でも翻訳・紹介されている。
執筆者:柴田 武
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…考古学のもう一つの萌芽はヨーロッパ先史時代の研究である。1820年ころ,C.J.トムセンはコペンハーゲンの国立博物館の収集品を,石器時代,青銅器時代,鉄器時代という三時期区分法によって分類展示し,混沌としていた先史遺物の理解に初めて一つの秩序を与えた。これ以後,先史考古学は自然科学から多くのヒントを得ながら自己の方法を形成してゆく。…
…青銅器時代の用語で示される文化はさまざまであっても,実態がどれほど違うのか比較の議論が可能なのも,青銅器時代が分類体系として存在しているからである。
[ヨーロッパ,オリエント]
19世紀の前半,デンマークのC.J.トムセンは石,青銅,鉄でできた斧や剣などの利器が,それぞれ違った構造の墓から出土する事実に注目し,青銅製利器の使われた時代を青銅器時代と呼んだ。鉄器はガラス器を伴うので,青銅器時代よりも新しく,石器は青銅器よりも古く遠古の昔の産物と考えた。…
…考古学の時代区分。デンマークの王立古文献協会が1836年に刊行した《北欧古代学入門》で,トムセンが人類文化を石器時代,青銅器時代,鉄器時代の3時代に区分し,この順の発達を説いたことに基づく。トムセンの定義によると石器時代は,〈武器と道具が,石や木,骨などで作られ,金属はほとんど使われていないか,あるいは全然使われていない時代〉である。…
※「トムセン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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