狭義には化学反応に伴う熱エネルギーを定量的に取り扱う物理化学の一分野。歴史的にはトムセンHans Peter Thomsen(1826-1909)およびM.P.E.ベルトロによる反応熱測定によって始められ,化学方程式の後にエネルギー変化を併記した熱化学方程式の形で表現された。これらの膨大な反応熱データは,〈ヘスの法則〉を用いて化合物の標準生成エネルギーの形で整理,統合される。このデータは,分子の結合エネルギーという概念と結びついて,化合物の安定性の問題に発展し,分子の安定化エネルギーやひずみエネルギーなどを定量的に表現する重要な知識を与える。また,熱力学の発展とともに化学反応の平衡を問題にする方向に発展し,物質どうしがどのくらい反応しやすいかの目安を与える親和力の概念を導いた。さらに最近では,物質の融解や転移現象など,物理的状態変化に伴う熱エネルギーの出入りをも観測対象とするようになり,物性論や構造論とも結びついて,化学物質の示す諸現象のエネルギー的側面を扱う学問分野という,広義の熱化学へと広がりつつある。
→化学方程式 →物性化学
執筆者:菅 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
化学反応に伴うエネルギーの放出・吸収のうち、主として熱エネルギーを対象とし、化学変化との相互関係を研究する化学の一分野。融解、蒸発、昇華などの物理的な状態の変化も対象に含まれる。これらの変化に伴っておこる熱の出入りと、関連した平衡定数や自由エネルギー変化なども対象となる。熱力学第一法則(エネルギー保存則)と、熱力学第二法則(エントロピー増加則)の二つが根本原理である。
化学反応に伴って出入りする熱エネルギー(エンタルピー)を併記した化学方程式を熱化学方程式という。これは化学反応におけるエネルギー保存則(ヘスの法則、1840)を表したものである。
[山崎 昶]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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