トラカミキリ

改訂新版 世界大百科事典 「トラカミキリ」の意味・わかりやすい解説

トラカミキリ

甲虫目カミキリムシ科の昆虫。黄褐色の体に黒色の縞模様があるものが代表的なので,その名がある。トラカミキリ類(トラカミキリ族)は世界に約800種を産する。昼間活動し,その行動は敏しょう。花に飛来し花粉を食べるものも多い。トラフカミキリXylotrechus chinensisは,一見,スズメバチ類に似ているので擬態好例とされる。体長15~25mm。日本全国,中国,朝鮮半島,台湾などに分布する。成虫は6~9月に見られるが,6月中旬から7月上旬にもっとも多い。日中にクワ類の幹の樹皮の隙間などに産卵。1匹の雌の産卵数は150個くらいと見られている。孵化(ふか)した幼虫は樹皮下を食べ,生育するにつれて材部へ穿孔(せんこう),幼虫で越冬,翌年の5月ころ蛹化(ようか),次いで成虫となる。

 同属のブドウトラカミキリX.pyrrhoderusはブドウ類の枯れたつるや枯れた巻きひげの根もとなどに産卵。幼虫は樹皮下を食べてつるを枯らすため害虫として知られる。またタケトラカミキリChlorophorus annularisの幼虫はマダケモウソウチクなどに穿孔する害虫として知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラカミキリ」の意味・わかりやすい解説

トラカミキリ
とらかみきり / 虎天牛

昆虫綱甲虫目カミキリムシ科の一群Clytiniに属する昆虫の総称。世界各地に分布しており、1000種近くが知られ、日本産はおよそ70種ほどである。中形からやや小形の細長い甲虫で、体表は密に毛で覆われており、毛色によって縞(しま)模様などのきれいな斑紋(はんもん)を現すものが多い。頭は前に突き出るが触角は短く、肢(あし)は細長い。前胸は丸く球形に近いが、円筒形のこともあり、上ばねは長くて両側が平行かすこし後方へ細くなり、肩が張っている。枯れ木、薪(まき)に集まり、樹葉上にもみられるが、花に集まる種類も少なくない。行動はすばやいものが多く、よく飛ぶ。幼虫は普通枯れ木やその枝の内部を食害するが、タケトラカミキリのように枯れたタケにつくものもあり、スギ生木に枯れ枝から侵入し加害するスギノアカネトラカミキリ(キオビトラカミキリ)や、クワの生木につくトラフカミキリのようなものもある。日本の最大種オオトラカミキリは北海道針葉樹にかなりの被害を与えたことがある。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トラカミキリ」の意味・わかりやすい解説

トラカミキリ
Xylotrechus chinensis

鞘翅目カミキリムシ科。トラフカミキリともいう。体長 15~25mm。体は赤褐色で,頭部,前胸背前縁,小楯板,上翅,腹部などは黄色短毛を密生する。前胸背中央部の横帯と後部は黒色。上翅には黒色横帯があり,基半部のものは斜走する。頭部は前胸に深く陥入し,一体となってほぼ円形となる。触角は短い。上翅は肩部で前胸とほぼ同幅で,後方に向って細まる。クワの害虫で,幼虫は材中に穿孔する。成虫は7~8月に出現し,スズメバチ類に擬態する。北海道,本州,四国,九州,台湾,朝鮮,中国に分布する。近縁のタケトラカミキリ Rhaphuma annularisは体長9~15mm,体は黒色で細く,触角の基部4~5節と肢は赤褐色。背面は黄色の微毛におおわれ,前胸背と上翅に黒色紋がある。上翅端は斜めに切断される。タケの害虫で,成虫は夏季に出現する。本州以南の日本全土,台湾,朝鮮,中国に分布する。なおトラカミキリ類はハチ類に似るものが多い。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「トラカミキリ」の解説

トラカミキリ
学名:Xylotrechus chinensis

種名 / トラカミキリ
別名 / トラフカミキリ
目名科名 / コウチュウ目|カミキリムシ科
解説 / クワの葉のうらや、幹に見られます。
体の大きさ / 17~26mm
分布 / 北海道~南西諸島
成虫出現期 / 7~8月
幼虫の食べ物 / クワ

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世界大百科事典(旧版)内のトラカミキリの言及

【カミキリムシ】より

…世界から約3万種,日本から約750種が記録されているが,研究者や同好者が多く,今日でも新種が次々と発見されている。 成虫の長い触角に科の特徴があるが,トラカミキリ類など短いものもいる。ヒゲナガカミキリの雄の触角は13cmにも達し,日本産の種ではもっとも長い。…

※「トラカミキリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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