リュウゼツラン科(APG分類:キジカクシ科)イトラン属植物の総称。半砂漠地に生え、木質の茎と多肉質の葉をもつ特徴があり、従来のユリ科から新しい科に変わった。北アメリカの南部、メキシコ、西インド諸島などに約30種ある。常緑木質植物であるが、茎がほとんどないものもある。葉は茎に頂生して多数集まるか、または根生する。線形または剣状で、肉質で堅く、先は刺(とげ)となるもの、縁(へり)に鋸歯(きょし)または糸状の繊維がつくものがある。葉心から大形の円錐(えんすい)花序を直立して、鐘形の大きい白色花を多数下向きに開く。花被片(かひへん)は6枚、雌しべは1本で、原産地では蒴果(さくか)を結ぶ。日本には江戸時代の末から明治年間に一部が渡来した。北アメリカ南部原産のアツバキミガヨラン(厚葉君代蘭)Y. gloriosa L.、キミガヨラン(君代蘭)Y. gloriosa var. tristis Carrière (Y. recurvifolia Salisb.)、イトラン(糸蘭)Y. filamentosa L.のほかに、北アメリカ南部から西インド諸島原産のセンジュランY. aloifolia L.、葉辺が黄色の園芸品種キンポウランなどが、本州の関東地方以西の暖地の公園や庭園に観賞用として植えられている。日当りでよく育ち、乾燥に耐え、土質を選ばない。都市の公害にも強く、移植は容易。繁殖は挿木、根分けによる。
[小林義雄 2019年5月21日]
先史時代、北アメリカのインディアンにとって、花は食料の一つであった。南西テキサスの岩陰遺跡からみつかった多数の糞石(ふんせき)に、ユッカの花粉が含まれていた。なかには花粉の90%以上をユッカが占める糞石もあり、ユッカの花期に集まり、花を食べる食生活のあったことが明らかにされた。そのもっとも古い糞石は2800年前にさかのぼる。ユッカはかつて飼料にされ繊維も得たが、現在の利用は観賞栽培にほぼ限られる。ヨーロッパには、1596年に初めてアツバキミガヨランが伝わった。日本には幕末に、オランダ経由でイトランが渡来したが、広がるのは関東大震災(1923)以後で、洋式庭園と洋館が増えたからといわれる。
[湯浅浩史 2019年5月21日]
リュウゼツラン科ユッカ属Yuccaの常緑植物の総称。アメリカ南部からメキシコや西インド諸島に約40種がある。多くは低木状だが茎の立たない種もある。センジュラン(千寿蘭)Y.aloifolia L.(英名Spanish bayonet,dagger plant)は茎が直立し,長さ30~40cmの硬い剣状葉を密生する。葉縁が黄色覆輪となるキンポウラン(金宝蘭)cv.Marginataの方が観賞価値は高い。ともに明治中ごろに渡来し,庭園に植えられる。キミガヨランY.recurvifolia Salisb.は長披針形葉を密生し,古株になると分枝して群生する。茎頂から1m以上の花茎を直立し,白色鐘状花を下向きに多数つける。アツバキミガヨランY.gloriosa L.(英名Spanish dagger,Lord's candlestick)は前種に比べ全体に大型で,葉は硬く,下葉も垂れない。花茎は長く,白色鐘状花も長さ7~8cmと大きい。開花期は夏~秋で,開花期間は長い。イトランY.filamentosa L.(英名Adam's-needle,needle palm,silk grass)は茎が短く,柔らかい粉白緑色の葉を叢生(そうせい)する。長さ1~2mの花茎を直立し,白色鐘状花を100花以上も着ける。天保年間(1830-44)に渡来した。ユッカ属は広い場所に似合うので,学校や公園によく植栽される。乾燥には強く,排水と日当りの良い土地を好む。耐寒性があり,関東以西では戸外で良く育つ。
執筆者:高林 成年
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