人民憲章(読み)ジンミンケンショウ(英語表記)People's Charter

デジタル大辞泉 「人民憲章」の意味・読み・例文・類語

じんみん‐けんしょう〔‐ケンシヤウ〕【人民憲章】

英国チャーチスト運動の指導者たちが議会民主化を目ざして作成した請願書。1837年に起草、翌年全国に配布して政治綱領となった。成年男子普通選挙権、無記名投票議員の財産資格撤廃、議員への歳費支給、平等選挙区制、毎年選挙の6か条からなる。

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精選版 日本国語大辞典 「人民憲章」の意味・読み・例文・類語

じんみん‐けんしょう ‥ケンシャウ【人民憲章】

(People's Charter の訳語) イギリスチャーチスト運動の政治綱領。一八三七年ラベットらが議会への請願書の形式で起草し、翌年全国に配布。チャーチスト運動の共同闘争目標として掲げたもので、成年男子の普通選挙権にもとづく完全な議会民主主義の実現を六か条にわたって主張している。→チャーチスト運動

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改訂新版 世界大百科事典 「人民憲章」の意味・わかりやすい解説

人民憲章 (じんみんけんしょう)
People's Charter

イギリスにおいて,労働者階級の立場から議会改革要求するロンドン労働者協会が,1838年に発表した議会請願のための綱領。同協会の指導者W.ラベットが起草し,急進派議員J.ローバックと元議員F.プレースがそれに補正を加えて法案形式で完成,同協会員と急進派議員各6名からなる合同委員会の議を経て5月8日発表された。この憲章は,8月6日のバーミンガム大集会以後,大衆運動の要求綱領となり,その名にちなんだチャーチスト運動(憲章主義者運動)が始まった。その内容は次の6項目からなる。(1)21歳以上の成人男子の普通選挙,(2)議員の財産資格の撤廃,(3)議会の毎年改選,(4)人口調査に基づく平等選挙区,(5)議員への給与支給,(6)無記名投票。チャーチストは翌39年から3回,署名を集めて人民憲章を議会に提出したが,いずれも否決され,実現をみることなく終わった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人民憲章」の意味・わかりやすい解説

人民憲章
じんみんけんしょう
People's Charter

1838年、イギリスのチャーティスト運動の要求を具体化した文書。成人男子普通選挙権、無記名投票、平等選挙区、議会の毎年改選、議員の財産資格撤廃、議員への給与支給の6項目からなる。1837年5月から議会の急進派議員とロンドン労働者協会のメンバーによって起草の準備が進められ、1838年5月8日刊行された。草案そのものの直接の作成者については、プレースとする説とラベットとする説との2説ある。内容自体はそれまでの急進的運動の主張を大きく超えるものではなかったが、チャーティスト運動の全国的統一の契機になった。

[岡本充弘]

『都築忠七編・訳『資料イギリス初期社会主義』(1975・平凡社)』

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百科事典マイペディア 「人民憲章」の意味・わかりやすい解説

人民憲章【じんみんけんしょう】

英国において1832年の選挙法改正に不満であった中産階級と労働者階級の人たちによって提案された議会改革のための綱領。ロンドン労働者協会の指導者W.ラベットが起草して,1838年に発表された。以後この憲章(チャーター)の実現を期してチャーチスト運動が展開することになった。その要求内容は(1)21歳以上の成人男子の普通選挙権,(2)議員の財産制限の撤廃,(3)議会の毎年選挙,(4)有権者数にもとづく平等な選挙区配分,(5)議員への歳費の支給,(6)無記名の投票。チャーチストは署名を集めて翌1839年以降3回にわたってこの憲章を議会に請願したが,いずれも取り上げられなかったため1848年に運動は消滅した。しかしその内容の6点は20世紀の前半までにすべて実現した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人民憲章」の意味・わかりやすい解説

人民憲章
じんみんけんしょう
People's Charter

イギリスのチャーティスト運動の政治綱領。 1837年にロンドン労働者協会の W.ラベットを中心とする指導的メンバーによって起草,38年5月8日「人民憲章」として公表された。その内容は次の6ヵ条から成る。 (1) 21歳以上の男子の普通選挙権。 (2) 無記名投票。 (3) 下院議員への歳費支給。 (4) 議員の財産資格廃止。 (5) 選挙区の平等。 (6) 年次議会。チャーティスト運動のなかでこの改革の実施を求める請願が議会に提出されたが拒否された。しかし (6) を除いて要求はすべて 20世紀の初頭までに実現された。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「人民憲章」の解説

人民憲章(じんみんけんしょう)
People's Charter

チャーティスト運動の基本綱領となった文書。ロンドン労働者協会の指導者ラベットが中心になって起草して1838年に発表。男子普通選挙権,無記名秘密投票制,平等な選挙区配分,議員の財産制限の撤廃,議員への歳費の支給,議会の毎年選挙の6項目の実現による議会改革を訴えた。以後この実現を期したチャーティスト運動が展開することになった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「人民憲章」の解説

人民憲章
じんみんけんしょう
People's Charter

1839年,イギリスのチャーティスト運動のとき,労働者団体が議会に提出した請願。「ピープルズ−チャーター」
(1)21歳以上の男子による普通選挙,(2)無記名投票,(3)議会の毎年改選,(4)議員の歳費支出,(5)議員の財産資格の廃止,(6)均等選挙区制の6か条からなるが,政府に拒否された。

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世界大百科事典(旧版)内の人民憲章の言及

【チャーチスト運動】より

…1838年から50年代にかけて,普通選挙を要求してイギリスで展開された労働者階級の大衆的政治運動。チャーチスト(憲章主義者)の名称は,〈人民憲章People’s Charter〉を要求綱領としたことによる。 産業革命の終期に当たる1830年代初頭のイギリスでは,富裕な産業資本家層の対極に貧しい労働者階級が形成され,彼らは階級として結束し,労働組合や協同組合をつくり,普通選挙を要求して独自に運動を起こすまでに成長していた。…

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