仮想記憶(読み)カソウキオク(英語表記)virtual memory

翻訳|virtual memory

デジタル大辞泉 「仮想記憶」の意味・読み・例文・類語

かそう‐きおく〔カサウ‐〕【仮想記憶】

virtual memoryコンピューターで、ハードディスクなど大容量の補助記憶装置を用いて、主記憶装置が拡大されたのと同様の効果を得る仕組み。主記憶装置の容量が足りない場合でも、仮想記憶を用いることにより、プログラムの実行が可能になるが、一般的に実行速度が遅くなってしまう。仮想メモリーバーチャルメモリー

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精選版 日本国語大辞典 「仮想記憶」の意味・読み・例文・類語

かそう‐きおく カサウ‥【仮想記憶】

〘名〙 コンピュータで、主記憶装置には実行に必要な情報のみを入れておき、その他の情報は大容量の外部記憶装置に入れて必要に応じてやり取りするシステム。バーチャルメモリー

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改訂新版 世界大百科事典 「仮想記憶」の意味・わかりやすい解説

仮想記憶 (かそうきおく)
virtual memory

コンピューターのメモリー(主記憶)を,実際に装備されているものより,事実上大きく見せかける,オペレーティングシステム(OS)の機能。

 コンピューターの記録装置は高速度で動作し,記憶容量が大きいことが強く要望される。しかし高速で大容量の記憶装置は一般に技術的,経済的に実現困難である。そこで高速度で小(中)容量の主記憶装置と,大容量だが速度は遅い補助記憶装置を,階層的に組み合わせて総合的に効率化,経済化するように構成される。この階層化された記憶システムを使用するとき,プログラマーが高速記憶と大容量記憶の2種の性質と利害得失をつねに意識して,全体の性能が十分発揮されるように階層間のプログラムやデータ群の移動を行うのはたいへんめんどうでもあり,負担も多く,誤りも生じやすい。そこでプログラムが取り扱う記憶装置を,実在の記憶装置と切り離して論理的に大容量の主記憶装置のみで構成されているもの,すなわち仮想アドレス空間としてとらえ,これと実在の記憶装置との対応づけや動作制御は,このために用意した記憶制御装置オペレーティングシステムの助けにより記憶動作を実行するのが仮想記憶である。これにより,主記憶装置のみで構成する場合より記憶動作速度は実効的にやや遅くなるが,実在の主記憶装置の実アドレスよりほとんど無制限といってよいほど広い大容量の仮想アドレスを使用できるようになり,プログラム作成は大幅に効率化される。実在の主記憶装置と補助記憶装置の間では,2~4キロバイト単位の情報がページとかセグメントと名づけられて,プログラマーの介在なしに必要に応じて往復する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仮想記憶」の意味・わかりやすい解説

仮想記憶
かそうきおく
virtual memory

コンピュータシステムにおいて、主記憶装置の容量よりも多くの容量をプログラムで取り扱うことが可能な記憶システム、またはその機構。仮想メモリ、バーチャルメモリともいう。

 コンピュータの記憶装置の記憶容量には物理的な限界がある。そこで、演算装置と直接に情報のやりとりをする主記憶装置には、実行に必要とするプログラムの部分やデータのみを常駐させ、副次的、とりあえず必要としないプログラムの他の部分やデータは大容量の外部記憶に置いて、必要な時点で主記憶に取り込もうとするものである。この考えを推し進めると、演算速度に直接影響を及ぼす情報を、キャッシュメモリーcache memoryとよばれる特別に速度の速い記憶装置に置いたり、外部記憶装置として磁気ディスクのほかに、さらに容量の大きい磁気カードを配したりして、記憶装置を何段階もの階層構造にしたコンピュータシステムをつくることができる。

 仮想記憶の考え方が具体化したのは、1970年になって、記憶階層の間のデータの受け渡しをハードウェアの制御で行うようになってからである。このため、命令で取り扱われる記憶位置(アドレス)の範囲、すなわちアドレス空間を実際の主記憶装置の容量を超えた範囲にとることが可能になった。

[小野勝章]

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百科事典マイペディア 「仮想記憶」の意味・わかりやすい解説

仮想記憶【かそうきおく】

コンピューターの記憶装置は,高速で動き,記憶容量の大きいことが重要である。この速度と容量を満たすために,高速だが容量の小さい主記憶装置と,大容量だが速度の遅い補助記憶装置を階層的に組み合わせてある。だが,この階層化された記憶システムは,階層間のプログラムやデータ群の移動には不便であり,誤りも生じやすい。そこでプログラムが取り扱う記憶装置のうち,参照程度が低い領域を補助(磁気)記憶装置に格納しておくが,これを仮想記憶という。仮想記憶により,実際の主記憶装置の容量に関係なく,自由な大きさのプログラムを実行したり,大量のデータ処理を行うことができる。プログラムが実行される際は,プログラムが必要とする仮想記憶領域が,その都度コンピューター内部で,実際の主記憶装置の空き領域に割り当てられ使用される。補助記憶を見かけ上主記憶として使用するもの。→ディスクキャッシュ主記憶補助記憶

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「仮想記憶」の解説

仮想記憶

OSが持つメモリー管理機能のひとつ。メモリーは、セグメントやページと呼ばれる単位に小分けされ、プログラムが必要とする容量を仮想メモリーとして貸し出している。こうすることで、物理上はまとまった容量の空きメモリーがなくても、細切れのメモリーを連続した仮想メモリーとしてアプリケーションに提供できる。OSがメモリーを管理することで、アプリケーション間でのメモリーの競合が起こりにくく、物理メモリーを効率よく利用できるのがメリット。また、同じ仕組みをハードディスクなどの外部記憶装置に応用することで、搭載するメモリー以上の大容量メモリーとして利用できる。WindowsやMac OSにおける「仮想メモリー」は、外部記憶装置をメモリーとして使う技術を指す。仮想メモリーを利用することで、メモリー不足でアプリケーションが起動できない、といったことが少なくなる。画像や映像処理ソフトのような大きなデータを扱うアプリケーションによっては、独自に仮想メモリーの機能を搭載している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仮想記憶」の意味・わかりやすい解説

仮想記憶
かそうきおく
virtual memory

ハードディスク装置など補助記憶装置 (外部記憶装置) にプログラムで見かけ上の記憶領域を設定し,主記憶装置のように扱えるようにしたもの。主記憶装置用のメモリが高価なために限定的にしか使えない場合,あるいは主記憶装置の容量をこえる大きなプログラムを動かさなければならない場合に使われる手法で,大量のデータを処理できるが,処理速度が遅くなる欠点がある。その手法には,セグメンテーションとページングの2種類がある。セグメンテーションは,大きなプログラムを中央処理装置 CPUが一度に扱えるいくつかのまとまりに分割する方法。ページングはプログラムやデータの最小単位であるページを,主記憶装置と補助記憶装置の仮想記憶領域でやりとりさせる。補助記憶装置から主記憶装置への転送がページイン,逆がページアウトとなる。

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知恵蔵 「仮想記憶」の解説

仮想記憶

現実の主記憶装置には容量の限界があるが、あたかもそれを超えて主記憶の容量があるかのように見せる仕組み。主記憶の容量を超えるアクセスは、主記憶のデータを一時的に補助記憶に待避させ、また補助記憶に待避していたデータを主記憶上に戻し、あたかもすべてのデータが主記憶上にあるかのようにプログラマーに見せる。種々の記憶装置のアクセス時間や容量制限を意識してプログラムするのは煩雑なので、仮想記憶を実現するために必要なアドレス変換や記憶装置へのアクセス制御は、ハードウエアによりすべて自動的に行われる。

(星野力 筑波大学名誉教授 / 2007年)

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IT用語がわかる辞典 「仮想記憶」の解説

かそうきおく【仮想記憶】

仮想メモリー。⇒仮想メモリー

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世界大百科事典(旧版)内の仮想記憶の言及

【オペレーティングシステム】より

…これをあたかも最大メモリーが実装されているように見せかけるのも資源の抽象化である。これを仮想記憶という。仮想記憶はメモリー実装量の具体値を捨象する。…

※「仮想記憶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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