小野田セメント(読み)おのだセメント

改訂新版 世界大百科事典 「小野田セメント」の意味・わかりやすい解説

小野田セメント[株] (おのだセメント)

日本で最も歴史の古い有数のセメント・メーカー。本社は山口県山陽小野田市。東京深川に1872年建設された官営セメント工場には遅れるが,民間では初のセメント会社として81年5月,長州藩士笠井順八により〈セメント製造会社〉の名称で山口県小野田町に創設された。1951年現社名に変更。1901年,困難な状況の打開のため三井物産と販売委託契約を結び輸出を伸ばした(この関係は終戦時まで続いた)。日露戦争後,朝鮮,中国東北地区をはじめ海外各地に工場を建設,内外計27工場を有するまでに発展した。敗戦により外地の18工場をはじめ全資産のほぼ半分を失い,経営危機におちいったが,戦後は各工場の設備増設,合理化を進めるとともに,主要消費地にサービス・ステーションを設置してセメント・タンカーによるばら積みセメントの輸送体制を確立し,また59年には革新的なセメント製造技術である改良焼成法を採用した。近年は,ニューセラミックスの開発,電子機器関連製品等に力を入れている。資本金203億円(1983年2月),売上高2432億円(1982年3月期)。94年関東地方に地盤をもつ秩父セメント合併秩父小野田(株)と改称。さらに秩父小野田は98年に日本セメントと合併して,太平洋セメント(株)となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小野田セメント」の意味・わかりやすい解説

小野田セメント
おのだせめんと

1881年(明治14)毛利藩士族笠井順八(1835―1919)により「セメント製造会社」として山口県小野田(現山陽小野田市)に創立された日本最初の民間セメント会社。1891年には小野田セメント製造会社と改称。1901年(明治34)三井物産と製品の一手販売契約を締結し、製造だけに専念した。そのため第二次世界大戦後の占領政策による三井物産の解体は、中国の大連(だいれん)、朝鮮の平壌(へいじょう)など多数の海外工場の喪失に加え経営的打撃となったが、これを克服して成長を遂げた。小野田工場のほか大分県津久見工場などの国内工場や、韓国など海外に合弁事業をもち、製品、技術輸出も世界各地に及んだ。1994年(平成6)秩父セメントと合併し、社名を秩父小野田、さらに98年日本セメントと合併し、太平洋セメントと改称した。

[森 真澄

『日本経営史研究所編『小野田セメント百年史』(1981・小野田セメント)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小野田セメント」の意味・わかりやすい解説

小野田セメント
おのだセメント

セメント会社。 1881年セメント製造会社設立,91年小野田セメント製造と改称。 1916年白色セメント製造開始。 29年中央セメント,38年大分セメント,42年東北セメントをそれぞれ合併。 43年東洋産業田原工場を買収。 51年現社名に変更。セメントを主力に石灰石その他の鉱物,土石の採掘加工,肥料など化学製品の製造を主体に,ウォーターフロント関連,不動産活用など多角化を進めていた。 94年 10月秩父セメントと合併して秩父小野田となる。

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世界大百科事典(旧版)内の小野田セメントの言及

【セメント工業】より

…需要は景気に大きく左右されるが,官公需比率が6割と高いため,とくに公共工事の動向に大きく影響される。また,第2次大戦後,他産業からの新規参入が多かったため,兼業メーカーの比率が高いこと,上位メーカー(三菱鉱業セメント(現,三菱マテリアル),小野田セメント(現,秩父小野田),日本セメント,住友セメント(現,住友大阪セメント))の市場占有率が高いことも特徴的である。 1824年,イギリスの煉瓦工アスプディンJoseph Aspdinは石灰石と粘土をまぜあわせたものを焼き,これを粉砕して水を加えて練ると,硬い岩石に近いものができ上がることを見いだした。…

【津久見[市]】より

…鉱床にはマグネシウム含有分が高い部分があり,ドロマイトとして採掘しているところもある。石灰石の生産は文久年間(1861‐64)の農業用石灰の焼成に始まるが,1918年以降のセメント用石灰石の採掘と38年の小野田セメント(現,秩父小野田)の工場建設によって本格的な生産に入った。現在石灰石は階段式採掘法により年間約3300万tを生産する。…

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