改訂新版 世界大百科事典 「福祉労働」の意味・わかりやすい解説
福祉労働 (ふくしろうどう)
社会福祉にかかわる職務や実践を労働という観点からみるときに福祉労働(あるいは社会福祉労働)という。この用語は,いうまでもなく20世紀以降の社会福祉事業の成立と発展,その制度化と専門分化を背景として登場するものであり,日本では,社会福祉にたずさわる職業集団が一定程度の形成をみるに至った1960年代の後半に,社会福祉施設改善運動の高揚とともに,しだいに一般化したようである。そしてそこでは,社会福祉の職務を明確に労働という概念でとらえ,社会福祉従事者を労働者の一部として位置づけるとともに,その労働の固有の性格あるいは特殊性を明らかにすることが意図されてきた。
福祉労働は,労働主体,労働対象,労働過程を含む労働一般がもつ性格に規定されることはいうまでもないが,他方においてその固有性は,社会福祉の公共的性格と専門的性格によって特徴づけられる。福祉労働を支えるのは一つには,人間社会の共同の責務を主体的,自律的に遂行しようとするボランタリズムであり,もう一つは科学・技術や哲学・倫理に支えられた専門職性を追求するプロフェッショナリズムであって,この両者の統一が福祉労働の今後のあり方として求められている。しかし現実には公共性の強調が福祉労働者の労働条件を低くおしとどめ,その結果として専門性が確立されないままに多くの問題を残しており,それらの解決が今後の課題となっている。
→社会福祉
執筆者:庄司 洋子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報