筑前(町)(読み)ちくぜん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「筑前(町)」の意味・わかりやすい解説

筑前(町)
ちくぜん

福岡県中部、朝倉郡(あさくらぐん)にある町。2005年(平成17)、朝倉郡三輪町(みわまち)、夜須町(やすまち)が合併して成立。町の北西部は三郡山地(さんぐんさんち)、北東部は古処山地(こしょさんち)の各末端の山々が連なり、その間にあたる北部山地は夜須高原とよばれる。これら山地に発して、南西に流れる山家(やまえ)川、曽根田(そねだ)川、草葉(くさば)川などが扇状地を形成し、町域の南部から南東部にかけて、筑後平野の北部にあたる平坦地が広がる。国道386号が北西―南東方向に町域を横断、北西端部で国道200号が交差する。また南端部を甘木(あまぎ)鉄道(レールバス)、国道500号がかすめる。平野部を中心に米・麦・大豆の普通作を基本とした農業地帯であったが、兼業化が進み、また福岡市や久留米市への通勤者も多い。安野焼、博多織、ナシ、カボスに似た柑橘類の「木酢(きず)(博多きずんこ)」などが特産品。夜須高原には県立夜須高原記念の森や国立夜須高原青少年自然の家が整備される。弥生時代から古墳時代の東小田峯遺跡(ひがしおだみねいせき)から出土した甕棺に収められていた鉄剣など7点は国指定重要文化財。焼ノ峠古墳(やきのとうげこふん)、仙道古墳(せんどうこふん)(装飾古墳)は国指定史跡。神功皇后伝説にまつわる社伝がある大己貴(おおなむち)神社に隣接して、神話題材とした遊具などを備えた「歴史の里公園」が整備されている。1919年(大正8)南部に陸軍の大刀洗飛行場(たちあらいひこうじょう)が開港。1940年(昭和15)には陸軍飛行学校が併設され、第二次世界大戦末期には特攻基地ともなった。1945年3月の空襲では勤労動員の学生をはじめ、飛行場を含む周辺一帯で1000人以上の犠牲者を出した。1987年、恒久平和を祈念し、戦時中の資料を展示する大刀洗平和記念館が開館。面積67.10平方キロメートル、人口2万9591(2020)。

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