贛州(読み)かんしゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「贛州」の意味・わかりやすい解説

贛州
かんしゅう / カンチョウ

中国、江西(こうせい)省南部にある地級市。3市轄区、大余(だいよ)など14県を管轄し、瑞金(ずいきん)市の管轄代行を行う(2016年時点)。贛江上流の章水(しょうすい)と貢水(こうすい)の合流点に立地し、そのため章と貢とをあわせた地名とされた。人口960万6300(2015)。水陸両路による南北交通の要衝で、とくに明(みん)・清(しん)代には南海交通の貿易港であった広州(こうしゅう)と北京(ペキン)とを結ぶ幹線道路の要地として繁栄した。現在も江西省南部の物資集散が盛んである。漢代以来県が置かれ、東晋(とうしん)の時代には南康郡治であった。隋(ずい)・唐代は虔州(けんしゅう)とよばれたが、宋(そう)代に贛州と改名して州治となり、元代には贛州路治、明・清代には贛州府治であった。1949年市制施行。

 江西省南部の交通、経済、行政の最大の中心地で、京九線はこの地を経由して北京と九竜(きゅうりゅう)(香港(ホンコン))を結んでいる。市中心部の西16キロメートルに2008年開港の贛州黄金空港がある。また新中国になってから冶金、機械、製紙、化学、食品などの工業が発達し、竹細工、革製品(革枕、革製トランクなど)の伝統工芸も盛んである。周辺農村は米、サトウキビサツマイモ椿油(つばきあぶら)、ラッカセイコウマジュート)を産し、近郊柑橘(かんきつ)類、スイミツトウの産出で知られる。名勝に八境台、通天岩などがある。

[河野通博・編集部 2017年2月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「贛州」の意味・わかりやすい解説

贛州 (かんしゅう)
Gàn zhōu

中国,江西省南部の都市。人口49万(2000)。1949年市となる。贛県は市の東の梅林鎮に別に置かれる。長江(揚子江)の支流である贛江の上流,章水と貢水の合流する盆地に位置する(贛という文字自体,章と貢の合一したもの)。長江流域と南方を結ぶルートの要衝にあり,古く戦国時代からその存在の重要さが認められていた。漢代に県が置かれてからもこの性格は変わらず,江西の動向を制する重鎮の一つであった。現在は往時の繁栄は見られないが,周辺に産する穀類やミカン,竹製品などの集散地であり,中心性の高い都市である。北宋代に造られた八境台,塔下寺塔をはじめとする文物遺跡も多い。
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世界大百科事典(旧版)内の贛州の言及

【贛江】より

…源流は東西に分かれ,東を貢水,西を章水といい,合した本流も両字を合して贛としたという。合流地点にある都市が贛州である。贛州より下流は,万安~吉安間には〈十八灘の険〉と呼ばれるような難所もあるが,遡航が可能で,清江(樟樹鎮)で袁江を合してよりはとくに水運が発達し,吉安,南昌を経て鄱陽湖を渡り,九江で長江水運と結びつく。…

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