肝蛭(読み)カンテツ(英語表記)liver fluke

翻訳|liver fluke

デジタル大辞泉 「肝蛭」の意味・読み・例文・類語

かん‐てつ【肝×蛭】

吸虫一種。体長2~3センチ、体は平たい楕円形で、前端円錐形に突出している。虫卵は水中孵化ふかし、中間宿主ヒメモノアラガイ侵入。成長すると水草に付着し、これを食べた牛・羊・豚・馬などの胆管に至って成虫となる。人間にも寄生し、腹痛嘔吐黄疸おうだんなどの症状を呈する。

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精選版 日本国語大辞典 「肝蛭」の意味・読み・例文・類語

かん‐てつ【肝蛭】

  1. 〘 名詞 〙 吸虫類カンテツ科の扁形動物。羊、山羊、牛などの肝臓に寄生し、時には人にも寄生する。体長二~三センチメートル。体は扁平な楕円形の葉状で、先端にある口吸盤の部分は突きでている。体色は褐色、または、淡緑黄色。卵は動物の糞便とともに排出され、水中で、幼生となって中間宿主のヒメモノアラガイなどに侵入して増殖する。セルカリアとなってこれら中間宿主を去って水辺の草などに付着し、草食獣に食べられると肝臓に入って成虫となる。牧畜上大害を及ぼす。〔改正増補和英語林集成(1886)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肝蛭」の意味・わかりやすい解説

肝蛭
かんてつ
liver fluke
[学] Fasciola hepatica

扁形(へんけい)動物門吸虫綱二生(にせい)亜綱肝蛭科に属する寄生虫。ほとんど全世界に分布する。ウシヒツジヤギなどの反芻(はんすう)動物の胆管に寄生するが、ブタ、ウマ、ヒトに寄生することもある。虫体は木の葉形で扁平、長さ2~5センチメートル、幅0.5~1.3センチメートル、腸管、精巣卵巣、卵黄腺(せん)は樹枝状に分岐している。

 卵は糞便(ふんべん)とともに外界に排出され、水中でミラシジウムとよばれる幼虫が孵化(ふか)して、中間宿主のヒメモノアラガイに侵入する。この貝の体内でスポロシスト、レジア、セルカリアと発育するが、この間にいわゆる幼生生殖を行い、1個のミラシジウムから100~500個のセルカリアができる。セルカリアは貝から遊出し、水草などに付着して袋に包まれメタセルカリアとなる。このようなメタセルカリアが固有宿主のウシなどに食べられると、メタセルカリアは宿主の小腸内で袋から出、腸壁を通って腹腔(ふくこう)に入り、肝表面から胆管に到達して成虫となる。成虫は大形なので、多数寄生すれば周囲の宿主組織に傷害を与え、有毒分泌物により、肝臓障害、下痢、貧血などをおこして衰弱死することもあり、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの家畜にとっては重要な寄生虫病である。

[町田昌昭]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肝蛭」の意味・わかりやすい解説

肝蛭
かんてつ
Fasciola hepatica; liver fluke

扁形動物門吸虫綱二生目肝蛭科の寄生虫。体長2~3cm,体幅 0.8~1.3cm。体は樹葉状で,前端がやや突き出る。腸管,精巣,卵巣,卵黄巣は樹枝状に分岐している。ほとんど世界的に分布し,ウシ,ヒツジ,ヤギなどの反芻動物の胆管に寄生するが,まれにブタ,ヒトなどにも寄生する。中間宿主はヒメモノアラガイサカマキガイなどの淡水産巻貝類で,それらからケルカリア (幼生) として水中に泳ぎ出し,水草などに付着して被嚢し,終宿主に食べられるのを待つ。多数寄生すると肝臓障害,下痢,貧血などを引起し,衰弱死することもある。家畜にとっても重要な寄生虫病の一つである。

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