翻訳|trematode
扁形(へんけい)動物門吸虫綱Trematodaに属する寄生虫の総称。楯吸虫亜綱(たてきゅうちゅうあこう)Aspidogastreaと二生亜綱(にせいあこう)Digeneaからなり、約7000種が知られているが、その多くは二生亜綱に属する吸虫類である。二生吸虫類はいろいろな体形のものを含み、吸着器として口吸盤と腹吸盤をもつのが普通であり、かつてはこれを二つの口とみて二生吸虫類をジストマdistomaとよんだが、現在この呼称は用いない。消化器は口に始まり、咽頭(いんとう)、食道を経て2本の腸管となり、腸管は盲端に終わることが多い。雌雄同体で一つの個体内に雌雄の生殖器を備えているが、住血吸虫などでは二次的に雌雄異体となった。成虫は脊椎(せきつい)動物の消化、呼吸、泌尿、循環などの器官に寄生し、人畜の疾病の原因となるものもある。
日本でヒトに寄生する吸虫類として重要なものに、肝吸虫、横川吸虫、ウェステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫、棘口吸虫(きょくこうきゅうちゅう)、日本住血吸虫などがある。
二生吸虫類の発育環は複雑で、種類により異なるが、一つ以上の中間宿主を必要とする。中間宿主の種類も吸虫によって決まっている。成虫は両性生殖により卵を産む。卵は外界に排出され、卵内にミラシジウムmiracidiumという幼虫を形成する。水中で孵化(ふか)したミラシジウムは繊毛をもち、遊泳して第一中間宿主の貝類に侵入する。卵が貝類に食べられてミラシジウムが孵化する種類もある。貝の体内でミラシジウムは繊毛を落とし、細長い袋状のスポロシストsporocystという幼虫に変態し、その中の胚(はい)細胞が発育して複数の娘スポロシストあるいはレジアrediaという幼虫を生じる。娘スポロシストあるいはレジアはスポロシストから脱出し、さらにこれらの体内の胚細胞より多数のセルカリアcercariaという幼虫を生じる。このような幼生生殖の結果、1個の卵より数百、数千のセルカリアができることもある。セルカリアは尾を備え、貝から遊出して第二中間宿主の魚類や甲殻類に到達し、それらの体表や体内で袋に包まれてメタセルカリアmetacercariaになる。水辺の草の上でメタセルカリアになる種類もある。固有宿主が食べ物といっしょにメタセルカリアを食べると、その体内で成虫になる。住血吸虫ではセルカリアが直接固有宿主に侵入して成虫になる。
楯吸虫類は体の腹面に多くの小室からなる吸着器を備えており、腹足類や二枚貝類の外套腔(がいとうこう)、囲心腔、腎腔(じんこう)、あるいは魚類やカメ類の消化管に寄生する。発育環には中間宿主を必要としないものが多い。
[町田昌昭]
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