改訂新版 世界大百科事典 「〓根」の意味・わかりやすい解説
根 (れんこん)
ハスの地下茎で,野菜として利用する。ハスには花を観賞する花バスと食用を主とする食用バスとがあり,食用バスは地下茎がよく肥大する。中国では紀元前から利用されていたが,長江(揚子江)流域での栽培が多く,それらが日本へ導入された。しかし日本にも古代(1200~1500年前)からハスがあったが,地下茎は現在の食用バスほど肥大しなかった。鎌倉時代以後に中国から食用種が導入され,それらは在来系の食用バスに育成され,さらに明治になって,すぐれた中国系の食用バス(支那種)が導入され,れんこんを目的としたハスの栽培が広がった。ハスは東南アジアあるいは中国大陸の温暖域が原産地の植物で,春の生育開始時期には,節間が長く,細い地下茎を泥中に長く伸ばし,夏から秋にかけて肥大する。冬季の休眠に入る前に先端寄り2~4節の地下茎は節間がつまり,節がくびれて肥大するので,その部分を掘り取って食用に供する。断面には地上部に通ずる数個から10個の大型の通気孔と多数の小型の通気孔とがある。支那種はれんこんが長大で収量も多いが,晩生のため西南日本の暖地に多く栽培され,この支那種と在来種との交配によって育成された早生や中生系の品種はより冷涼な東日本に多く,促成栽培にも利用される。食用としてのハスの利用は日本にかぎらず中国,東南アジアにもみられるが,東南アジアでは中国人が栽培・食用としていることが多い。また種子も食用にされる。れんこんは,〈からしれんこん〉をはじめ,煮たり,酢のものとしたり,あるいは砂糖煮にして菓子として使うなど,イモ類に似た野菜として広く用いられている。なおれんこんをちぎったときに引く糸は,らせん状に肥厚した道管壁が引き伸ばされたものである。
執筆者:平岡 達也
料理
秋から冬にかけてが出盛りで,節が太く色白で芽に近いものが美味とされる。栄養的には糖質が主成分で,ビタミンB1がわずかに多い。煮しめ,きんぴら,精進揚げの具,あえもの,酢ばす,すしの具などにするほか,すりおろしたれんこんにデンプンなどのつなぎを入れて蒸したり,揚げたりすることもある。熊本地方の郷土料理として知られる〈からしれんこん〉は,卯の花(おから)をまぜたからしみそを穴(通気孔)に詰め,小麦粉とソラマメの粉を合わせて溶いたころもをつけて油で揚げる。中国料理でも汁物,あえ物,いため物などに使う。れんこんはあくが強いため,料理を白くあげたいときは酢水にさらすか,酢水でゆでて使うとよい。
執筆者:松本 仲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報