日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカアジ」の意味・わかりやすい解説
アカアジ
あかあじ / 赤鰺
red scad
[学] Decapterus akaadsi
硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。津軽(つがる)海峡から山口県にかけての日本海沿岸、および北海道の太平洋沿岸、相模(さがみ)湾から九州にかけての太平洋沿岸、沖縄諸島海域、東シナ海、中国舟山(しゅうざん)群島、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアなどの沿岸に分布する。体は細長く、背びれと臀(しり)びれの後方の尾柄(びへい)上にそれぞれ小離鰭(しょうりき)があり、脂瞼(しけん)(目の周囲や表面を覆っている透明の膜)があることなどでムロアジ属に含まれる。本属のなかでは体高はやや高くて、側扁(そくへん)する。体高は頭長よりすこし低く、体長の24.0~27.9%。頭長は体長の26.7~30.1%。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下をわずかに越える。上下両顎の歯は著しく小さくて、上顎では2列、下顎では1列に並ぶ。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に歯がある。鰓蓋膜(さいがいまく)(鰓孔の上部後縁)は鋸歯(きょし)状ではない。頭部背面の鱗(うろこ)は目の前縁上方まで達する。側線の湾曲部に43~53枚の円鱗(えんりん)があり、その後部に3枚および直走部に26~29枚の稜鱗(りょうりん)(鋭い突起を備えた肥大した鱗。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう)がある。第1背びれは第2背びれより高い。胸びれは第2背びれの起部の下方に達するか、そこを越える。体の背側面は緑青色、腹側面は銀白色で、上顎は赤みを帯びる。背びれ、胸びれ、尾びれおよび背離鰭(背びれ後方の小離鰭)は赤色。鰓孔の上縁に黒斑(こくはん)がある。水深100~300メートルに群れで生息し、浮遊性の甲殻類、翼足(よくそく)類(カメガイ類)、魚類、頭足類などいろいろな動物を捕食するが、オキアミ類、アミ類、魚類が主食である。体長20~22センチメートルで成熟する。産卵期は台湾近海では2~8月(盛期は4~7月)、東シナ海では5~6月である。1回に約12万~14万粒を産む。1年で体長約14.5センチメートル、2年で約18センチメートル、3年で23センチメートル以上に成長し、最大体長は30センチメートルほどになる。おもに巻網、底引網、定置網などで漁獲されるが、台湾では体長27センチメートルを超える大形魚が一本釣りされる。肉質はマアジに比べて柔らかいがおいしく、総菜にされる。
本種はD. kurroidesの亜種(D. kurroides akaadsi)やD. kurroidesのシノニム(同種異名)にされていたが、魚類研究者の木村清志(せいし)(1953― )らの形態学的な研究(2013)によって独立した種D. akaadsiとして認められた。D. kurroidesは側線直走部の稜鱗数が多くて30~32枚であること、頭長は体長の30.3~33.0%であることなどでアカアジと区別できる。
[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]